【Jリーグ】セレッソ・柿谷曜一朗が放つ「ゴールの匂い」を日本代表に。 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 赤木真二●撮影 photo by Akagi Shinji

 クルピ監督は70分、2トップのひとりであるエジノに代えて杉本健勇を投入し、中盤の守備を強化する一方で、2トップのもうひとり、柿谷は最前線にとどまらせた。「ボールを奪ったら、曜一朗のスピードを(カウンターで)生かす」ためである。

 柿谷は言う。
「監督から、ずっと2点目を取りに行けと言われていた。クリアボールでも何でも、前にボールが来たときに全力でボールを追いかけて、そこから決定的な仕事をすることを意識していた」

 結果を言えば、柿谷が追加点を奪うことはできなかった。「とどめを刺す2点目のチャンスはあったが、判断が悪かった」とクルピ監督。当の柿谷もまた、「僕が前を向いたときのプレイの質はもう......、まったく何もできなかったに等しいほどの出来やと思う」と反省を口にした。

 だが、そんな苦い経験がまたひとつ、ゴールに対する意識を強くする。柿谷が続ける。

「(自分たちがポゼッションするだけでなく)ボールを奪ったときに、しっかりカウンターで仕留めるのもサッカー。そういうところの質はまだまだ上げていけると思ったし、それが上がっていけばいくほど、僕自身も得点のチャンスが増えると思う」

 冗談めかして「僕(の連続試合ゴール)は終わったので、(2試合連続ゴール中の山口)螢にはいっぱい決めてほしい」と話し、周囲を笑わせた柿谷だったが、ゴールへの渇望は強まるばかりだ。

 こうなると柿谷には、好調セレッソだけでなく、やはり日本代表での活躍も期待したくなる。彼が発する「何か起こりそうな雰囲気」というのは、現在のJリーグでは、他の選手からはなかなか感じることができないものだ。

 柿谷自身は、代表入りについてこんなことを語っている。
「点を決めているとはいえ、90分間通してのプレイが全然(ダメ)。もちろん、勝つという結果が一番大事やし、そこに全力を尽くしているが、まったくできていないことが(自分には)やっぱりある。(代表入りは)まだまだ過ぎて、全然考えていない」

 とはいえ、第2節の甲府戦後には、クルピ監督が「今日のゲームで曜一朗は、ディフェンスにおいて決定的な仕事を2回した」と話していたように、以前と比べて運動量も増え、チーム戦術の中での守備も確実にこなせるようになった。まだ物足りなさはあるにしても、かつてのような、ボールを持ったときだけに力を発揮する独善的な選手では、もはやなくなっている。

 奇しくも昨日の東京戦には、日本代表のザッケローニ監督が視察に訪れていた。「そういうときに限って点が取れない」と苦笑いしていた柿谷のプレイは、イタリア人指揮官の目にどう映っただろうか。

 少なくとも試してみる価値はあるはず。今の柿谷のプレイには、そう思わせるだけの期待感がある。

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