【Jリーグ】大型補強の浦和レッズ。ACLを制覇した2007年の再来なるか? (2ページ目)

  • 菊地正典●取材・文 text by Kikuchi Masanori
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

2007年フォーメーション(ACL決勝2nd-leg対セパハン戦)2007年フォーメーション(ACL決勝2nd-leg対セパハン戦) そして右の図は、浦和が2007年にACLを制した時のメンバーである。スタメンはもちろんのこと、フォーメーションに入っていない選手を見ても、錚々(そうそう)たる面々だ。この選手層があったからこそ、2007年はアジアの頂点に立つことができたと言える(2007年はJリーグでも2位という好成績)。当時はワシントン、ポンテの存在が非常に大きく、今のチームには彼らほどズバ抜けた選手はいないかもしれない。だが、選手層では引けを取らないし、昨季からの積み重ねができれば、2007年を上回ることも十分に可能だ。

 さきほどは選手層の厚さについて説明するため、ふたつのチームを作ってみたが、さらに新戦力について、もう少し具体的に考えてみよう。今回の補強は「経験のある一流選手」ということが条件のひとつだったが、もうひとつは「複数のポジションをこなせる選手」ということもあるようだ。それは特に、那須や森脇に当てはまるだろう。

 那須はセンターバック、ボランチ、そしてサイドバックでもプレイすることが可能だ。入団会見で那須は、「センターラインで一番特徴が生きると思っているので、そこで勝負したい」と話していた。実際、ペトロヴィッチ監督の戦術では、サイドにはサイドバックとしてだけではなく、ウイングとして攻撃的な役割が大いに求められるため、センターラインでの起用が主になるだろう。しかし、リードしている試合の終盤では、守備固めとして那須をサイドに回す選択肢も考えられる。

 一方、森脇は主にセンターバックでの起用になるだろうが、広島ではサイドでもプレイしていた。森脇も那須と同様、守備の選手ではあるが、なによりペトロヴィッチ監督の戦術をすでに理解していることが大きい。彼の加入によって、チーム全体の選択肢が広がることも重要なポイントだ。

 そして関口は、シャドーのポジションが主戦場となるだろう。シャドーのポジションには柏木陽介、マルシオ・リシャルデスに加え、梅崎司も昨季のシーズン後半にフィットしたが、新加入の関口と山田直も交われば、充実かつ激戦のポジションとなる。だが、本来は攻撃的な選手である梅崎がサイドで活躍したことを考えれば、守備面でも貢献できる関口がサイドでプレイする可能性も決して低くない。

 複数のポジションをこなせる那須や森脇、関口に対して、興梠はFW1本での勝負になるだろう。しかし、興梠にはむしろスペシャリストとしての活躍が期待できる。昨季は確固たるストライカーがおらず、原口がチームプレイを含めて奮闘したものの、やはり本職のストライカーではなかった。興梠は「ゴールを決めることは大事だけど、FWの仕事はそれがすべてではない。消える動きで味方が点を取るようにするのも、大事な仕事」と話したが、まさにその動きはペトロヴィッチ監督の戦術に求められるもの。「ペトロヴィッチ監督のサッカーが大好き。昨季のスタイルを見る度にどんどん浦和でやりたいと思うようになった」という興梠がワントップとして活躍できるかどうかが、浦和の浮沈に大きく関わると言っても過言ではない。

 もちろん、サッカーはハイレベルな選手を集めたからと言って強くなるわけではない。新加入選手がどこまでチーム戦術にフィットできるかも未知数だ。だが、期待するに十分の戦力は整った。「生まれ変わった」昨季から、「王国復活」の今季へ――。アジアを制したときのような圧倒的な強さを蘇(よみがえ)らせることができるのか、浦和の新たな挑戦が始まる。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る