【Jリーグ】37年ぶりの天皇杯優勝。柏が備えつつある「強豪クラブの風格」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 後半に入っても、G大阪がボールを支配し、柏が守るという展開は変わることがなかったが、ネルシーニョ監督が「我慢して落ち着いて戦えた」と振り返ったように、柏が決定的なピンチを迎えることはなかった。

「勝ちに値するゲームをしてくれた」

 指揮官がそう語った試合の後に待っていたのは、Jリーグ誕生後、柏レイソルとなってからは初となる天皇杯制覇。前身の日立製作所時代を含めると、実に37年ぶりの歓喜だった。

 指揮官の決断と同時に、柏の天皇杯制覇を語るうえで見逃すことができないのは、優勝チームに与えられるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場へのモチベーションである。ネルシーニョ監督が語る。

「クラブにとっても選手にとっても、かけがえのない大会であるACLは目標だった。この優勝は、我々が覚悟と決意を持って臨んだ結果だ」

 4年前、同じ天皇杯決勝の舞台でG大阪に敗れた試合を振り返り、キャプテンの大谷秀和は「まだ(ACL出場に)ふさわしいチームではなかった」と言い、こう続ける。

「4年前はまだ、ACLに出るということがどういうことなのか分かっていなかった」

 大谷の言葉を裏付けるように、4年前の柏は翌2009シーズンのJ1で16位に終わり、J2へ降格した。あとわずかで天皇杯のタイトルを手にしようとしていたクラブにとっては、あまりに寂しい結末だった。

 そんな"負け癖"のついていた柏を変えたのが、現在も指揮を執るネルシーニョ監督である。

「勝つことを常に求める。勝てないときでも勝つための準備を怠ってはいけない。レイソルに勝利の文化を根づかせたい。降格に脅えるチームになってはいけない」

 昨季、J1初制覇に至る過程で常々そう話していた指揮官だったが、今回の天皇杯制覇後、あらためて胸中を語った。

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