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【Jリーグ】39歳で全試合フル出場。
鉄人・服部年宏が語る「サッカー選手としての『運』」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 今も服部は5本指のソックスを履いている。ピッチでは練習後、しばしば裸足になる。そしてグラウンドを指で噛むようにしながら走るのだ。

「あのタイミングであの治療をしていなかったら、今頃はサッカーをやめていたかもしれません。これは、自分のサッカー選手としての運だと思っています。ジュビロのようなチームに入れたこともそうだし、自分はついているんですよ」

 飄々と笑う姿に、福が招き寄せられるのかもしれない。

「自分は選手として勝ち過ぎてきた。
それが最近は、本当によく負けている」

――プロサッカー選手として到達した境地とは?

「“敵のボールを奪い、味方に回してやる”。それこそが自分の役割だと思ってやってきました。上手い選手たちと一緒にやることで、いろんなタイミングとかが身に付いてきたんだと思います」

 そう語る服部年宏は、“いかに味方を輝かせるか”という部分で研鑽を積んできた。磐田では、今もJリーグ史上最強と語られるチームの一員としてプレイ。藤田俊哉、名波浩、中山雅史らの攻撃力を存分に引き出してきた。

「磐田時代に、ドゥンガが真っ赤な顔で『わかったのか?』とミスを問いただすことがあって。怖いから、『わかったよ』と答えますよね? でも、同じミスをしちゃうんですよ。そのときは、『何がわかったんだ!』って烈火の如く怒られました(笑)。3mの距離をつめるところをさぼっていたりするときなんですけど。おかげで、ポジショニングの部分は研ぎ澄まされたと思います」

 ただ、J2やJFLは技術も戦術も洗練されていない。あまりのギャップに頭を抱えて意気消沈し、引退を考えるベテラン選手もいる。服部は自分を厳格に律して行動することを心掛けたという。

「それまで、本当に上手い連中とやってきましたからね。正直言えば、“こんなこともできないのか”っていらつくこともあるんです。でも、いらつくっていうことは、自分自身の感情も、その状況そのものもうまくコントロールできていないから、というところに思い至りましたね。どうしたらこいつらの心に一番響くのか、という指導者目線で物事を考えるようになりました」

 年を重ねる中、彼は伝道師としての楽しみも手に入れたと言える。

「若い選手には、まず自分のプレイに答えを持ってほしい。なぜそのプレイを選択したのか。そうすれば、そこから対話ができるから。答えがあるならそこから積み上げていけばいい。例えば、染矢(一樹/MF)は細かく言うことで守備の意識が高くなり、帰陣はできるようになった。ボールを奪い取ることができていないのは課題だけど、少しずつ伸びていることに手応えを感じています」

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