【Jリーグ】J1昇格プレイオフで手腕を発揮した若手監督たちの存在感 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT

 近年のJリーグを見ていると、各クラブが監督を選ぶ際、過去の実績が重視されることが多いように思う。特にJ1では、その傾向が強いのではないだろうか。だが、そうした監督が確実に成果を挙げているかというと、そうでもない。それどころか、むしろ失敗に終わるケースも少なくないのである。

 にもかかわらず、若手監督が敬遠されるのは、ひとえに「経験のなさ」が理由だろう。

 実際、「個人的にはいつでも現場に戻る準備をしていた」と話す山口監督のもとには、昨季オフにも監督就任の打診があったという。だが、その過程では、こんな厳しい言葉もかけられたと明かす。

「経験のないヤツには任せられない」。

 監督としてのキャリアがなく、若い彼らはどうしても"ナメられる"のだろう。そうした背景があるからこそ、今季のJ2は、ある意味で革新的だった。

 大分をJ1昇格に導いた田坂監督が、監督1年目の昨季について語る。

「他のチームで試合に出られずに大分へ来た選手が多く、1シーズンまともに(試合に)出ていた選手がいなかった。そのため、去年は試合前になると、選手がまるで子どものように『足が痛い』『腹が痛い』と言って、試合から逃げていた」

 田坂監督が取り組んだのは、選手の意識改革だった。若き指揮官は2年間の監督生活を振り返り、「選手たちは努力してくれた」と言い、こう続けた。

「選手たちは1人前になって、サッカー選手らしくなった」

 その気持ちは選手たちも変わらない。大分のFW高松大樹が言う。

「田坂監督によって、選手全員、"自分がやらなきゃいけないチーム"になった」

 その結果が4年ぶりのJ1昇格である。田坂監督に代表されるように、彼ら若手監督は経験が少ないなりにも、それぞれのクラブで成果を残した。事実、彼らに率いられた4クラブは、いずれも昨季より順位を上げている。最終的には、非情にも明暗分かれる結果となってしまったが、彼らが今季残した成果は十分評価に値する。

 海の外に目を向ければ、今季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で強豪バイエルンを破って話題となった、BATE・ボリソフ(ベラルーシ)のビクトル・ゴンチャレンコ監督は、実に35歳。彼が初めてCLで指揮を執ったのは、なんと31歳のときのことである。

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