【日本代表】カウンターとショートカウンター。まったく異なるゴールまでのアプローチ (3ページ目)

 これはカウンターでも同じことだが、ショートカウンターでも、ラインを使って守ることは非常に重要なこと。サイドのタッチライン、ゴールライン、オフサイドライン、このラインで守るのが原則だ。そのうえで相手のパスコースを限定していく。そして選手は全員、ボールを取った次のアクションを、守備をしながら考え、攻守の切り替えのスピードを速くしなければいけない。

 たとえば、今のレアル・マドリードは、ショートカウンターを武器にしている典型的なクラブだろう。レアルというよりモウリーニョ監督のサッカーともいえるだろうか。チェルシーやインテルでやっていた頃はとくにそうだったが、非常に高いラインをとってコンパクトにして追い込んでいってボールを奪い、一発のパスでゴールを決める。

 チェルシーの時は、奪ってすぐに一本のパスで、当時はロッベンやドログバがそのままゴール前まで行ってしまうシーンが多かったが、あれはそういう守り方ができているから成立していたことで、そのためには規律がしっかりしていることが必須条件だ。周りの選手が「相手がこのエリアに来たときにここでボールを取る」という予測を立てられれば、マイボールにした直後の動き出しが速くなる。取ってから動くのではなくて、ここで取るだろうという前提で攻撃の準備をしているということだ。

 ショートカウンターは、戦術的な規律があって、狙ってはめ込んでやっていかなくてはなかなか成功しない。もちろん、全員に完璧に戦術を徹底させて実行させることは難しい。これはよく、コーチや指導者同士の会話で言われることだが、「一流選手にしっかり守備をやらせたらこれほど強いチームはない」。世界のトップクラスでも、優秀な選手は守備については手を抜いたりする傾向が強い。たとえばイブラヒモビッチやエトーは、守備に全力を注ぐイメージがあまりないように、特に攻撃的なポジションの選手たちは守備にエネルギーを割くことを嫌がる。
 
 そうしたエゴの強い選手たちであっても、しっかりと守備をさせるからこそ、モウリーニョ監督は評価をされているのだと思うし、それは代表チームでも同じで、カウンターやショートカウンターといった戦術も含め、ザッケローニ監督がどのように選手たちを指導してチームを強化していくのか、引き続き注目していきたい。

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プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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