【フットサル】元日本代表選手が分析する『キング・カズが覚えるべきこと』 (2ページ目)
一例を挙げると、フットサルもサッカーと同じようにゾーンディフェンスが主流ですが、サッカーとちょっと感覚が違うのは、ゾーンでありながら常に人をつかまえておかなければいけない場面があることです。例えば、自分のマークしている選手がピッチを斜めに走ってスペースに抜けていくときです。その際は、相手がボールを持っていなくても、一緒についていかなければいけません。こうした細かな約束事がフットサルではたくさんあります。その状況に合わせたディフェンスのやり方を体に覚え込ませ、周囲と連係してスムーズにこなせなければ、試合では通用しません。
しかもW杯では、世界チャンピオンになったことのあるブラジルや、欧州チャンピオンになったことのあるポルトガルと対戦します。周りの選手がカバーする余裕などないと思うので、ちょっとしたマークミスは致命傷になります。短期間で、カズさんがその緻密な守備戦術をどこまで習得できるのか、気になるところです。フットサルでは選手の入れ替えが自由ですから、守備の時間帯にカズさんがピッチ上にいることは少ないと思いますが、攻守が瞬時に入れ替わるので、決して疎かにできることではありません」
ミゲル監督が就任以降、チームディフェンスの基礎を作るのに、実は1年以上の時間を費やしている。それほど細かい約束事があって、各選手が体に動きを染み込ませるのにそれだけ苦労したということだ。カズは、それをこの短期間で覚えて、なおかつ自然に動けるようにしないといけないわけだ。
(2)数あるサインプレイの習得
「フットサルはピッチが狭くてスペースがない分、全員がサインプレイなどで規則的な動きをして、わずかなスペースを作り、決定機を生み出すのが大切です。特にCKやFK、相手ゴールに近いところでのキックインなどのセットプレイは、ゴールを奪うためにとても重要なプレイになります。通常こうしたひとつひとつの状況、つまりCK、FK、キックイン、ゴールクリアランス(※サッカーで言うゴールキック)などで、それぞれ5つくらいのサインプレイがあります。このすべてを覚えて、動けるようになるのが、ふたつ目の課題になるでしょう。
セットプレイに限らず、インプレイ中にもサインプレイはありますし、今からすべて覚えろと言われたら、僕でも不安になります。日頃、アイコンタクトやあうんの呼吸など、感覚的なコンビネーションでプレイしているサッカー選手にとっては、それこそ簡単なことではありません。(合宿に参加した)カズさんのコメントなどを見ていても、サインプレイには苦慮している様子がうかがえます」
サインプレイで全員が決められた動きをし、チーム全体でシュートチャンスを作るのがフットサルの特徴だ。そのサインプレイの数の多さはサッカーの比ではない。また、ひとつのサインプレイでも、相手の出方によっては動きを変えるといった応用編もあるという。攻撃面ではシューターとしての役割を担うと思われるカズだが、こうした細かいサインプレイを覚えて動けなければ、シュートさえ打てないということだ。
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