【Jリーグ】理想的成長。首位を走る広島・森保一監督の手腕 (2ページ目)
しかし、そんな攻撃的な姿勢を維持するためには、豊富な運動量が必要だった。ハマれば破壊力抜群の攻撃サッカーも、シーズンを通して安定した力を発揮するのは難しかった。ボランチの森崎和幸は「例年は夏場に失速していたが、今年は波がないことがこの結果につながっている」と言い、こう続ける。
「今年も、夏場は(暑さで)運動量が上がらない試合もあったが、自分たちのサッカーができなくても、イライラせずにやれた。今日(横浜FM戦)のようなじれったい展開のなかでも、相手のスキをうかがう安定した戦いができている」
実際、広島の変貌ぶりは明らかだ。
第28節を終え、総失点28はJ1最少。昨年同時期の39と比べると、大幅減である。加えて、今年の広島に特徴的なのは、大量失点する試合がなくなったということだ。
昨年の広島は3点以上失った試合が、実に8試合。当然と言うべきか、それらの試合は全敗だった。しかも、うち6試合が6月下旬から9月上旬までに集中しており、森崎和が言うように「夏場の失速」が広島を苦しめていた。
ところが、今年は3点以上失った試合がここまでゼロ。GK西川周作が「守備意識は確実に高まっている。それは(シーズン前の)キャンプから監督がずっと言ってきていること」と話すように、大きく崩れることのない守備が今年の広島を支えている。
森崎和が語る。
「先に点を取られても下を向かず、まずは同点に、という気持ちでやれている。実際のところ、先制された試合はひとつも勝っていないけど、一度追いつかれても突き放す試合は結構ある。メンタル面で成長できていると思う」
と同時に、昨年までの売りだった攻撃面にも変化はあると、森崎和は言う。
「監督がよく言うのは、『プレイをはっきりさせよう』ということ。もちろん、つなげるときは今まで通りつなぐけど、相手のプレッシャーが厳しいときは(相手DFラインの)裏を狙って大きく蹴って、一度押し上げることも、今年は選択肢になっている」
昨年までのように、意地になって低い位置からパスをつなごうとし、相手のプレスの餌食となって大量失点、などという試合はまったく見られない。
だからと言って、守備意識ばかりが強まり、自慢の攻撃力が低下したわけではない。実際、ここまでの総得点53は、昨年同時期の40を大きく上回る。失点を減らし、落ち着いて試合を進められる効果は、得点数にも表れている。
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