【日本代表】欧州遠征直前。世界の強豪に対して絶対に必要な守備力とは? (2ページ目)


 また、守備には大きく分けてふたつある。「相手のボールを奪う守備」と「ゴールを守る守備」のふたつだ。そのどちらを優先するかの判断をチーム全員が理解できていなければコンパクトな守備陣形は保てない。ボールを取りに行くのであれば、全員がそのためのポジションをとる。無理にボールを取りに行かず、ゴールを守る守備の時は不用意にボールに食いつかないで、ゴール前を固めて相手の侵入に対応する。

 さらに、サイド攻撃に対してどう守るかについての注意点は、選手同士の距離感だろう。それから、サイドアタッカーをスピードに乗せないためのスペースのケアも必要になる。サイドバックが相手のサイドアタッカーにアプローチして、ボールを奪おうとチャレンジしたら、味方がそれをカバーしなくてはいけない。ただし、味方選手との距離間隔があきすぎたらカバーはできない。そのための個々のポジショニング、守備ブロックの構築も、もちろん重要だ。

 ザッケローニ監督が試合中、選手にコンパクトにしろと、身ぶり手振りをまじえて叫んでいる姿がテレビでもよく見られる。このことからもわかるように、守備陣形をいかにコンパクトに保つことができるかどうかが、現代サッカーの守備では重視されている。

 ファーストディフェンスに入る選手が、ボールホルダーに対してどれだけプレッシャーをかけて相手のプレイに制限をかけることができるか。それ次第で他の選手のポジションが決まってくる。つまり、最初のアプローチがいかに迅速かつ正確にできるかが、重要になってくる。

 いいアプローチが出来たら、味方がコンパクトに守りやすい状況をつくりだせるし、DFラインも上げられる。しかし、最初の守備がゆるかったら、またはミスがあったら、ラインを上げようとしても、ラインの前や裏にスペースを与えてしまうことになって、ピンチになりかねない。

 そういう意味では、相手にボールを持たせながら、どこでボールを奪いにいくのか、その判断を全員で共有して、いい守備をしなくてはいけない。ここで言う、「いい守備」というのはラインを使うこと。オフサイドライン、サイドのタッチラインを使って、コンパクトな状況に相手を追い込んでいく。ラインをうまく使いながらプレッシャーをかけて、狭い局面でボールを奪う。

「そんなことは当たり前。わかっている」と言われるかもしれないが、実践するのは非常に難しい。クリスティアーノ・ロナウドやメッシに対して、どうやって守るかを考えたときに、こうすればいいと言うのは簡単だが、重要なのはそれが実行できるかどうかだ。

 昨シーズンのヨーロッパリーグ決勝の取材でルーマニアのブカレストに行ったが、そこでアスレティック・ビルバオの練習取材にも行き、マルセロ・ビエルサ監督の守備のトレーニングの一部を見た。そのとき、フィールドの選手全員がきれいに連動して相手を追い込んでボールを奪うのを見て、「サッカーのオートマティズムとはこういうことか」というのをあらためて実感した。

 ファーストディフェンスに入った選手が動き出した瞬間、残りのフィールドの9人が見事に連動してカバーリングとプレスをかけていく。サイド攻撃されたらどう動くか、中央突破に来たらどう動くかが、共通理解として選手に浸透している印象を受けた。

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