【日本代表】
現代サッカーとザックジャパンのGKに求められる能力とは

  • photo by Fujita Masato

 また、足元の技術に関しては、今の育成は非常にしっかりしているので、GKだけでずっと練習させることは減ってきており、GKも小学校の時からフィールドの中に入ってプレイさせるケースが増えてきている。フィールドの選手のひとりとしてボールをしっかりと扱えて、ゲームの流れが読めないといけないからだ。

 ユーロやW杯を見てもそうだが、やはりGKのレベルの違いは結果に大きく影響している。たとえば、今年のユーロでベスト4に残った国のGKを見ると、スペインがカシージャス、イタリアはブッフォン、ドイツはノイアーという、世界的に名前が通ったGKばかり。センターフォワード同様、GKが現代サッカーの中でさらに重要なポジションになっている。

 GKは、ほんの10センチの差でゲームの結果が変わるポジション。勇気がないとできない。同時に、攻撃の第一歩はGKからと言われるほど、現代サッカーはスピーディになっているので、GKからのカウンター攻撃も非常に有効だ。つまり、パントキックやロングスローも含めて、GKの判断の速さが大事になる。

 さらに私がGKに求めたいのは、PKやシュートを止めて一喜一憂しない冷静さ。今年6月のユーロで、カシージャスがフランスのFKをギリギリで弾いたシーンがあったが、彼は防いだあとに、何ごともなかったかのように落ちつきはらっていた。『全然問題ないよ』という表情で防いで、『気にするなよ、もうちょっと寄せてくれ』ということが味方に伝わる。そうした雰囲気が、最終的には味方からの信頼を勝ち得るし、安心感をもたらすということだ。

 ここで慌ててセーブしていたら、相手は、次はいけそうな気がしてくるが、『そこへ撃っても無理だよ』という表情で弾いて、精神的に『どこに撃っても入らないな』と思わせることができれば相手へのプレッシャーになる。

 そうした部分も含めて、ザックジャパンの正GKの川島永嗣も、非常に成長していると思うし、すごく落ち着いてきたと感じている。そこにはベルギーでの経験というのも当然あると思うし、代表戦を重ねて自信を深めていることも関係していると思う。また、五輪代表の権田修一も、インタビューの受け答えを見ていても堂々としているし、試合中の振る舞いも含めて、チームとDFラインに安心感を与えられる選手という印象だ。そうした彼のメンタリティはすごいと思うし、能力も非常に高い。期待できるGKが出てきたなと、これからが楽しみになる選手のひとりだ。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日神奈川県生まれ。176cm。日本リーグ時代、三菱(現・浦和)に入団し93年からJリーグへ。95年50試合32得点で、日本人初のJリーグ得点王に。日本代表45試合9得点。02年現役引退。S級ライセンス取得後、2008年から浦和レッズコーチに就任。現在はサッカー解説者として『S☆1』(TBS)など各媒体で活躍。

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