【日本代表】現代サッカーとザックジャパンのGKに求められる能力とは (3ページ目)

  • photo by Fujita Masato

 また、足元の技術に関しては、今の育成は非常にしっかりしているので、GKだけでずっと練習させることは減ってきており、GKも小学校の時からフィールドの中に入ってプレイさせるケースが増えてきている。フィールドの選手のひとりとしてボールをしっかりと扱えて、ゲームの流れが読めないといけないからだ。

 ユーロやW杯を見てもそうだが、やはりGKのレベルの違いは結果に大きく影響している。たとえば、今年のユーロでベスト4に残った国のGKを見ると、スペインがカシージャス、イタリアはブッフォン、ドイツはノイアーという、世界的に名前が通ったGKばかり。センターフォワード同様、GKが現代サッカーの中でさらに重要なポジションになっている。

 GKは、ほんの10センチの差でゲームの結果が変わるポジション。勇気がないとできない。同時に、攻撃の第一歩はGKからと言われるほど、現代サッカーはスピーディになっているので、GKからのカウンター攻撃も非常に有効だ。つまり、パントキックやロングスローも含めて、GKの判断の速さが大事になる。

 さらに私がGKに求めたいのは、PKやシュートを止めて一喜一憂しない冷静さ。今年6月のユーロで、カシージャスがフランスのFKをギリギリで弾いたシーンがあったが、彼は防いだあとに、何ごともなかったかのように落ちつきはらっていた。『全然問題ないよ』という表情で防いで、『気にするなよ、もうちょっと寄せてくれ』ということが味方に伝わる。そうした雰囲気が、最終的には味方からの信頼を勝ち得るし、安心感をもたらすということだ。

 ここで慌ててセーブしていたら、相手は、次はいけそうな気がしてくるが、『そこへ撃っても無理だよ』という表情で弾いて、精神的に『どこに撃っても入らないな』と思わせることができれば相手へのプレッシャーになる。

 そうした部分も含めて、ザックジャパンの正GKの川島永嗣も、非常に成長していると思うし、すごく落ち着いてきたと感じている。そこにはベルギーでの経験というのも当然あると思うし、代表戦を重ねて自信を深めていることも関係していると思う。また、五輪代表の権田修一も、インタビューの受け答えを見ていても堂々としているし、試合中の振る舞いも含めて、チームとDFラインに安心感を与えられる選手という印象だ。そうした彼のメンタリティはすごいと思うし、能力も非常に高い。期待できるGKが出てきたなと、これからが楽しみになる選手のひとりだ。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る