【Jリーグ】ゴトビ監督(清水)「我々のサッカーを静岡の鏡に」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

——日本のサッカーは攻撃的サッカーに向かっていますか?

「そうでなければなりません。Jリーグが世界的なレベルになるためには、そして日本代表が世界の中で互角に戦おうと思えば、攻撃的な考え方は不可欠です。比喩的な言い方をすれば、ライオンのよう逞(たくま)しい心を持つことです。それに科学的な方法と、日本人特有の賢さ、サムライスピリットが噛み合えば、攻撃サッカーは構築できます。諦めない忍耐強さやプラン立て、そして攻撃的サッカーの組織、戦術の追求も必要です。選手が機能的である必要もあります。流動的で、ボールを持っていないときもスペース作りをしていかなければなりません。

 音楽はパーカッションのスティックの音で始まりますが、サッカーはパスから始まります、ボールスピードが勢いをつけます。日本の選手には偉大なパスの才能があります。幸いなことに、どの選手もそれを持ち合わせています。パスだけではダメなので、そこから突破のプレイに入るわけですが、相手ゴールに近づくにつれて注意しなければいけないのは冷静さです。日本人に問題があるとすれば、ここです。ゴールに近づくほど、日本人は熱くなる。プレイに力が入る。パスにしても、ラストパスが不正確になる。焦ってしまうのです」

——8節のFC東京戦。退場者が出て10対11の戦いになったところで決勝ゴールが生まれました。最後はもう1人退場者が出て9人になりながら、11人の相手に勝利した。この試合で目に付いたのは、ゴトビ監督の退場者が出てからの布陣編成でした。10人になっても3FWの態勢を崩さず、相手のサイドにプレッシャーをかけ続けました。

「私は10人 になっても勝利を追求する交替をしました。それは我々が達成しようとしているものと大きな関係があります。我々はサイドに速さというものを求めています。吉田豊と大前元紀(右)、イ・キジェと高木俊幸(左)。この4人は両サイドで新幹線のような役割を果たしています。FC東京戦では、人数が1人減ってもその両サイドの関係を活かそうとしました。そこで優位に立つことが勝利への道に他なりません。ここ2、3試合はそこを封じられ苦戦していますが、再開後のJリーグでは復活してくれるでしょう」

——大前と高木は何かと注目されますが、両サイドバックの吉田とイ・キジェもいいですね。

「スパイスとして利いています。現代サッカーでは中央にあまりスペースがありません。現代サッカーで成功するためには、攻撃的なサイドバックが不可欠になります。彼らが中盤の高さまで進出し、中盤と絡むと数的優位な状況が生まれます。ですからサイドバックにも攻撃的な質が求められます。パスプレイ、コンビネーションプレイができ、1対1で抜いていけるような選手にならなくてはいけない。

 今年加入した吉田豊は、攻撃的なところはまだ改善していく必要があります。彼にとってダニエウ・アウベスはいいモデルです。守備はパワフルで素早い。すでに日本で最高の右サイドバックと言えるほどです。河井陽介もよい右サイドバックです。逆に彼は前に出てきたとき、とても危険な選手になれます。彼の場合は4つのポジションをこなすユーティリティ性も魅力です」

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