サッカー日本代表の主流はクラブユース育ち でもストライカーに「部活」出身者が多いのはなぜ? (3ページ目)
【ゴールゲッターの素養とは】
かつて、インタビューで上田が明かしていた話がある。
「小学校のころ、クリスティアーノ・ロナウドのドキュメントをテレビで見たことがあって。ロナウドに『クリスティアーノ・ロナウドをどう思うか』という質問があるんです。それに彼が『大好きだよ』と答えて。普通の小学生だと『変なの』って恥ずかしがるかもしれない。でも、僕は素直に『格好いいな』って共感しました。自分が好きだからこそ、もっと高めたいって思えるんだよなって」
上田は、自分自身を革新できる異能を持っていた。だからこそ、鹿島アントラーズユースに昇格できなくても、自らをあきらめていない。むしろ高校の部活で自分と対峙し、反骨を育み、思考を重ねている。その行動規範こそ、ゴールゲッターの素養だろう。
部活FWは、クラブユースより指導や環境が整っていないチームで、自ら考えて判断する。その過程で、思考展開をインストールできるのかもしれない。それが強敵には通用しないこともしばしばだが、戦いのなかで適応してシステムをアップデートすることができる。周りの選手との連係を選択肢にしながらも、決して依存はせず、したたかに乗り越えられるのだ。
クラブユース出身の現役ストライカーでは、鹿島アントラーズの鈴木優磨が最高傑作かもしれない。荒々しくギラギラしながら、技術的にはエレガントで、ポストプレーなどは美しい。キックも得意で、リズムがあり、景色も見えている。しばしば不必要な軋轢を生むし、厄介なところもあるが、仲間想いで勝利への執着は正しく、実にストライカー然とした男だ。
日本が世界有数のサッカー大国になるには、このあたりにひとつヒントがあるかもしれない。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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