サッカー日本代表の主流はクラブユース育ち でもストライカーに「部活」出身者が多いのはなぜ? (2ページ目)
【全員がうまいと欠落するものがある?】
その力が育まれるのは、"自分が決める"とならざるを得ないチームだろう。お世辞にもうまい選手が集まらず、"お山の大将"になると言うのか。そうしたFWは往々にして体力面で優れ、屈強でスピードもあり、"頼れるのは自分しかない"と腹を括った試合を重ねて、ストライカーの矜持を身につける。技術や戦術はあとから追いついてくる格好だ。
興味深いのは、世界的な下部組織を誇るバルセロナが、ストライカーの輩出だけは苦しんでいる点だろう。
バルサはテクニック重視の戦術を浸透させ、MFを中心に世界的な選手を次々に生み出してきた。プレーメイカーでは、ジョゼップ・グアルディオラ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツなどの系譜は圧倒的。現在もフェルミン・ロペス、マルク・カサドなどを輩出している。センターバックも、カルレス・プジョル、ジェラール・ピケ、パウ・クバルシなど脈々と精神が受け継がれる。また、左サイドバックも、アレハンドロ・グリマウド、マルク・ククレジャのようにビッグクラブでプレーする逸材も出す一方、アレハンドロ・バルデ、ジョフレ・トレントなどテクニシャンを続々と出している。とどめとしてリオネル・メッシを筆頭にしたサイドアタッカーは彼らの強みで、ラミン・ヤマルは今や世界最高のアタッカーだ。
ところが、ストライカーの人材は乏しい。ボージャン・クルキッチやアンス・ファティのように有望な若手は出ているが、伸び悩んで鳴かず飛ばずに。目立った活躍はできていない。
「うまいが怖さがない」
そう本質を突かれて、脱落を余儀なくされる。
そうなる理由を考えると、全員がうまいチームでは、お互いにが技術を軸に高め合うわけだが、そこでストライカーに必要とされる"欲"がそぎ落とされるのかもしれない。その欲はエゴイズム、ナルシズムとも言い換えられ、一般的には「悪」と捉われがちである。しかし、その危うい独りよがりこそが萎えない不屈さに変化し、勝利をもたらすのではないか。
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