近賀ゆかりにとってなでしこジャパンは「目指す場所じゃなくて、居たい場所だった」 (3ページ目)
【有吉佐織とのライバル関係】
ライバルであり支えあっていた同ポジションの有吉佐織この記事に関連する写真を見る――いつの時代もサイドバックは人材不足なイメージですが、2011年から2016年あたりは有吉佐織選手が一気に伸びて、近賀さんとはライバル関係にありました。
近賀 キング(有吉)は自分のなかではすごく大きな存在なんです。それは今も変わらず。
――それ、本人に言ったことあります?
近賀 どうだろう? 最後の試合で言ったと思います。
――これまでにも有吉選手と近賀さんの話をする機会が何度かあったんですが、彼女の近賀さんに対するリスペクトは半端ないですよ?
近賀 えっ! 自分が一方的にリスペクトしていると思っていました。最後の試合が新潟戦でうれしかったのはキングがいたからっていうのも大きくて、あまりにリスペクトが強すぎて、何も要求もされていないのに最後に着ていたユニフォームをキングに押し付けて帰ってきました(笑)。
――これは、2人が出ていた2015年W杯カナダ大会の話を聞かせてもらわないといけませんね(笑)。
近賀 確かに(笑)。当時、キングとはポジション争いをしなきゃいけない関係で、最初は私が出ていて、そのあとキングが出るようになったとき、本来ならこんなに応援しちゃいけないんだろうなって思うくらい、悔しいのにベンチから本気で応援しちゃっていました。
――大会の最中ですら、「キングの活躍がうれしい」って近賀さんは言っていましたよ。
近賀 あの大会は自分としてもめちゃくちゃ悔しかったんですけど、キングがすごく結果を出したじゃないですか。それは本気でうれしかったんです。これはよくないことだと思うんですけど。もちろん自分としても諦めずに全力でやっていました。そうでないとキングに失礼だし、それは、キングが控えに回っていたときにしてくれていたことだったから。
自分が出ていたときも、キングには「ここはどうやって抑えたらいいと思う?」「こういうやり方はどうだろう?」っていろいろ相談していました。普通はライバルとはそういう話はしないのかもしれないけど、世界と戦うなでしこジャパンの右サイドバックとして課題を共有するのも克服するための相談ができるのも、同じポジションのキングしかいないじゃないですか。
――近賀さんたちの関係って、近賀さんがなでしこジャパンに初めて入った頃の状況に似ていますね。
近賀 それです(笑)。あの頃、出られなくなってきていたごみさん(加藤與恵)の代わりに出始めたボランチ初挑戦の(阪口)夢穂に、自分がやってきたことを伝授しているごみさんの姿だったり、柳さん(柳田美幸)がチームのためにしている接し方とかを見ていて、「この人たちすごいな。簡単にできることじゃないな」って思っていたんですけど、キングにも同じことを感じたんですよね。だから自然とこういう関係になれたんだと思います。
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