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谷口彰悟がアキレス腱断裂から復帰 大ケガをしてあらためて気づいた多くの人たちの支え (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke

【普通の打撲ではないかも...】

 相手FWと並走していた僕も、その瞬間は相手の足が当たったと感じて、「これは相手のファウルになるだろう」と思いながらピッチに倒れ込んだ。

 だから、ピッチ内へと駆けつけたチームドクターにも、こう告げた。

「蹴られた。(相手に)蹴られた」と──。

 まだ痛みは続いていたものの、思いっきり蹴られたことによる打撲だろうとの印象を抱いていた。きっと、しばらくすれば痛みも治まっていくだろうと......。

 そう思って立ち上がろうとして、ピッチに足をついても、足に力が入らず、「これは普通の打撲ではないかもしれない」......そう思った。

 プレー続行は難しいと判断してロッカールームに戻るときも、まだ打撲だと思っていた。今思えば、ただ......この事態を信じたくなかっただけなのかもしれない。

「大丈夫。きっと大丈夫だ」

 ロッカールームに戻り、処置室のベッドに上がると、チームドクターがふくらはぎをつまんだ。ギュッ、ギュッと何度かつまむと言われた。

「アキレス腱が切れている」

 そのとき、「えっ!」と言ったことは覚えている。

 嘘だという気持ちと、最悪の事態を招いてしまった現実を受け入れられなかった。

 たしかに試合前から足に違和感を覚えていたが、それが黄色信号だったとは考えていなかった。その黄色は赤色に変わり、最悪の結果を招いたことに、僕は言葉を失った。

 同時に、いろいろなことが頭の中を駆け巡った。

 アキレス腱の断裂となれば、大ケガの部類に入る。ピッチを離れる期間は長期に及ぶ。この試合(リーグ第12節)の直後には、日本代表の活動があり、そこにも参加できなくなる。

 また、ここまでの自分自身についても思いを巡らせた。今シーズン、やっとの思いでシント・トロイデンへの移籍が決まり、ヨーロッパで自分が戦えることを証明しようと決意していた。コンディションも徐々に上がり、やれる自覚を抱いていた矢先だった。日本代表においてもワールドカップ最終予選では先発出場する機会が増え、確かな自信をつかんでいた。

 それなのに「今か」......。

 時間にすればほんの一瞬だったが、本当に多くのことを考えた。

 その悔しさと虚しさ、同時に不安も抱いた。

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