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サッカー日本代表の1年を論点整理 W杯予選首位独走の陰に山積するこれだけの問題点 (4ページ目)

  • text by Sportiva

【どうなる?パリ五輪世代】

杉山 山本ナショナルチームダイレクターが「歴史的な戦い」と、大げさな表現で言ったのも同じことでしょう。視聴率を上げたいという思惑を100%否定するつもりはない。ただ、日本のサッカー産業の中心に日本代表がいる状態は少しスライドさせていかないと。

浅田 たとえばW杯予選をもっと地方でやってもいい。イタリア代表もスペイン代表も常に首都のスタジアムでやっているわけじゃないんだから。

 メンバーの固定化について言うと、老婆心ながら2002年のあとの2006年、2010年のあとの2014年を思い出します。いずれも若い選手が成長してきて、好成績も残して、「4年後が楽しみ」と期待されて、ことごとくこけてきたという歴史がある。いい選手が出てきたから、その人たちに固執してメンバーを固定して失敗したわけですが、今回はちょっとそれに似ています。東京五輪で活躍した選手たちがカタールW杯で中心になり、彼らの脂が乗ってくる4年後は期待できるという状況に、既視感を覚えます。

杉山 それで言うと、東京五輪の代表は森保監督が兼任し、五輪代表とフル代表を一緒に混ぜるように仕向けていた。なぜパリ五輪ではそれをしないのか。山本ナショナルチームダイレクターは「上がつまっている」と言うけど、下から来ているのは確かなのに、その流れに上から栓をしてどうするんだ、と。ここにも行きづまり感がある。

浅田 東京五輪の頃はさかんに「1チーム2カテゴリ―」という言葉が使われていたけど、そんな言葉も聞かれなくなったし、パリ五輪組はなかなか代表に入ってこない。「実力がないからだ」と言うかもしれないけど、そんなことはないし、仮にそうだとしても、使わなかったらそのつけはあとから来ます。

 ちょっとビックリしたのは、サウジアラビア戦、オーストラリア戦のメンバーに、町田ゼルビアの望月ヘンリー海輝が選ばれていたこと。パリ五輪世代で、パリ五輪のメンバーには選ばれていない選手が選ばれた。彼は、五輪はおろか、大学生中心で出たアジア大会ですら選ばれてない。これは「1チーム2カテゴリ―」がまったく機能していないということ。もし森保監督が町田の試合を見ていて「あいつはすごくいい」と思ったなら、大岩剛五輪代表監督に「使ってみてくれ」と言わないとダメだと思う。これは、ピラミッドの仕組みが機能していないか、スタッフの意思の疎通に問題があるかだろう、と言いたくなります。

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