最優秀選手にヴィニシウスを選ばなかったのはなぜ? 森保一監督の投票に透けて見えた「志向」 (3ページ目)
点が取れて縦にも抜ける。言い換えればドリブル&フェイントが巧みなストライカーだ。日本のストライカーがおしなべてサイドに出ると芸がない。唯一の例外は、ぎりぎり浅野拓磨ぐらいか。
左右の違いはあるが、モハメド・サラー(リバプール)もヴィニシウスと並ぶウイング兼ストライカーだ。リバプールは今季のCLの本命である。もしCLで優勝すれば、筆者に投票権があるなら迷わず彼に一票を投じるだろう。
クリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシの両巨頭も、もともとはウイングの選手だった。ドリブル力がなければ、バロンドールに何度も輝いていないはずだ。カリム・ベンゼマ、アリエン・ロッベン、サミュエル・エトー、アンドリー・シェフチェンコ、ティエリ・アンリ、ロビン・ファン・ペルシー、ルーカス・ポドルスキ......、森保サッカーから生まれてきにくそうなウイング兼ストライカーは枚挙にいとまがない。
ヴィニシウスへの投票回避に、森保サッカーの構造的な問題が透けて見える。自分のやりたいサッカーを口にすることが少ない森保監督だが、隠しようのない「志向」とはこのことである。三笘がこれをどう見たか、聞いてみたいものである。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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