サッカー日本代表はなぜオーストラリアを攻めあぐんだのか 見逃せない左右のバランスの悪さ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【メンバーの固定に見える「弱気」】

 違和感を覚えたのは、自ら及第点を下すかのような森保監督の談話になる。これではW杯ベスト8以上を目標に掲げながら、アジアのレベルにどっぷりと浸かっていることを自ら言っているようなものだ。

 ポポヴィッチ監督はこの一戦に、前戦(10月10日)の中国戦からメンバーを6人入れ替えて臨んだ。森保監督が体調不良の遠藤航を田中碧、鎌田大地を久保建英と、ふたりしか入れ替えなかったこととは対照的である。多くの選手を起用しながら敵地で日本と引き分けたポポヴィッチに対し、ほぼ同じベストメンバーでこの予選を戦っている森保監督。

 オーストラリア戦に日本がスタメンを6人入れ替えて1-1で引き分けたのなら、及第点をつけてもいいだろう。藤田譲瑠チマ、望月ヘンリー海輝、関根大輝、大橋祐紀らを登用した結果なら、ある程度は評価できる。

 だが、そうした余裕はいまの森保監督にはまったくないようだ。同じメンバーで戦う理由について森保監督は「確認事項を少なくしたい」「前の試合の経験を生かしたい」と説明したが、短い間隔で戦うW杯本大会ではどうするのか。2026年北中米W杯は試合数が増える。決勝トーナメントは32チームで争うので、ベスト8は6試合目という計算になる。今予選の戦い方では、3試合目でいっぱいいっぱいになる。

 だが、これこそが森保采配の本質だろう。2022年W杯、2021年東京五輪、さらには過去2回のアジアカップも固定型だった。東京五輪後の会見では「日本はまだ先を見越した戦いをするのは早い」と、口にしている。

 毎度さまざまな理由をつけているが、根っこにあるのは「弱気」だ。代表監督のレベルがここにある限り、日本は旧態依然としたサッカーから抜け出せないだろう。

 加えてこの試合で、森保監督は交代枠を使いきらなかった。海外組は9割。選手の実力は拮抗している。選手層もかつてないほど厚い。ところが監督采配はこの有様だ。選手はそんな森保監督を観察していることだろう。出場機会に恵まれない選手だけではない。使ってもらっている選手も、欧州の自分の所属クラブの監督ならどうするだろうかと、知らず知らずのうちに比較しているはずだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る