サッカー日本代表はなぜオーストラリアを攻めあぐんだのか 見逃せない左右のバランスの悪さ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【日本にも決定的チャンスはなかった】

 森保監督は「タケ」(久保建英)とか「カオル」(三笘薫)などと、選手をファーストネームで親しげに呼ぶが、選手はむしろ距離を置き、監督を冷静に見ているのではないか。交代枠の未消化は愚の骨頂だ。余裕のなさ、策のなさをストレートに反映したものになる。これでは監督のカリスマ性は上がらない。選手との信頼関係も構築されない。森保監督より、この試合で34歳のMF(ルーク・ブラッタン)に初キャップとなる出場機会を与えたポポヴィッチ監督のほうが断然、懐の深い監督に映る。

 試合の話に戻れば、オーストラリアはオウンゴール以外、チャンスらしいチャンスはなかったと先述したが、日本も似たようなものだった。ボール支配率こそ上回ったが、これだという決定的チャンスはなし。早い話が攻めあぐんだ。

 1トップの上田綺世の力不足以上に見逃せないのが、左右のバランスだ。オーストラリアは5バックで、俗に言う、「引いて構えるチーム」である。となれば日本の攻撃はサイドからが鉄則になる。その追求が森保監督は毎度のことながら甘い。

 前半、日本のサイド攻撃は左からが多かった。三笘が1対1に3度勝利を飾り、ドリブル&フェイントのキレ味を見せつけた。だが、それはどことなく単調に見えた。周囲に人が絡まない単独プレー、局地的プレーであるため、広がりがなかった。孤立していたと言ってもいい。

 一方、右はウイングバックの堂安律とシャドーの久保が開き気味に構えたことで、事実上サイドアタッカーが2枚いる状態だった。それ自体は悪くないが、ふたりはともに左利きだ。縦突破が少ない、縦方向への推進力に乏しいという点でも一致する。加えて左利きがキツく、右足キックが不得手なので、得点に直結しやすい、最深部からのマイナスの折り返しが期待できない。

 右サイドのコンビに改善が見られたのは後半17分、堂安に代わり伊東純也が投入されてからだ。縦への推進力という点で伊東は堂安を大きく上回る。右利きなので、最深部からの右足の折り返しも期待できる。久保と堂安のコンビよりキャラが被らないことも手伝い、そこから久保がピッチを後にした後半25分までの8分間、右サイドは良好な状態にあった。

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