サッカー日本代表はなぜオーストラリアを攻めあぐんだのか 見逃せない左右のバランスの悪さ (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 だが、鎌田が久保に代わりシャドーに入ると、サイドアタッカーは伊東1枚となる。孤立し、存在感を急に失うことになった。

 鎌田と同じタイミングで、南野拓実に代わって中村敬斗が投入されると、左は右とは対照的に活気づいた。中村がウイングバックに入り、三笘はシャドーに回った。

 だが、三笘は根っからのウインガーだ。左のサイドアタッカーはこの瞬間にふたりとなった。後半31分、1-1に追いつく同点ゴールが生まれた産物である。中村の縦突破からの折り返しをオーストラリアDFがクリアしきれずに、枠内に流し込んでしまった。

 左右が常時ふたりがかりで両サイドを突いていれば、決定機は多く生まれたはずだ。オーストラリアがサイドアタッカー各1枚の5バックで構えてきたので、なおさらだった。しかし、日本の布陣も5バックだ。アレンジでサイドアタッカーが各2枚になり、両サイドで数的優位ができあがることもあったが、5バックの限界も見る気がした。

 ほとんど攻められることがないのに最終ラインに人がダブつく姿、余剰する姿に、森保監督の弱気ぶりを見る気がした。後ろに人が多ければ、その分、攻撃の機能性は低下する。

 引いて守る相手になぜ正々堂々、向かっていかないのか。怖がる様はこの日のピッチにしっかり記されていた。よって試合は面白いとは言えなかった。ひと言で言えば凡戦。両チームともオウンゴールがなければ0-0である。

 埼玉スタジアムの満員のファンに勝利を届けられなかったことを森保監督は残念がってみせたが、ファンは勝利のみを待望しているわけではない。面白いサッカーを見たいというファンは少なくない。極論すれば、1-0より3-2。5人で守って無失点をアピールするサッカーでは、スタンドの満員は続かない。筆者はそう考える。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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