サッカー日本代表が救われた中国のあまりの不出来 大勝でも浮かび上がった問題点とは? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【「7対0」というより「2対-5」】

 期待していたその"予選らしさ"を、この中国戦からまるで味わうことができなかった。もちろん勝利の喜びに浸るファンのほうが多数派ではあるが、失望感を覚えるファンも少なからずいた。ハラハラ感、ヒリヒリ感は後半の途中から完全に失われた。帰路を急いだファンの姿は、在り方として正しいものに見えた。

 集まった観衆は5万2398人。埼玉スタジアムの定員が6万3700人なので、収容率はおよそ82%だった。メディアが中国の脅威で危機感を煽っても、スタンドには空席が目立った。日本代表のW杯アジア最終予選といえば、かつてはプラチナペーパーだった。1時間足らずで完売したこともあった過去が懐かしい。この日来場した5万2398人のなかで、次回も絶対に足を運ぼうと考えているファンはどれほどいるだろうか。そうした視点でこの試合を振り返っても、喜べない試合になる。

 日本のよさが目立ったというより、中国の不出来に救われた試合。「7対0」というより、印象的には「2対-5」という感じの一戦だった。

 前半12分、遠藤航がCKをヘディングで決めた先制点シーンから拍子抜けだった。久保がCKを蹴った瞬間、遠藤についていた中国のマークは何を思ったか、その場を離れ、どフリーにした。ゴール前であれだけフリーでヘディングを打てるケースを見たことがないと言いたくなるほど、その先制ヘッドはイージーゴールだった。

 試合はハーフコートゲームならぬ、3分の1コートゲームとなった。攻める日本、守る中国の構図は鮮明になった。だが三笘薫がヘディングで2点目を決めたのは前半のアディショナルタイム(45+2分)だった。日本の問題を探すとすれば、この間のプレーに見て取ることができた。攻めあぐんではいないが、攻めきれていない。惜しいチャンスは作った。しかし、決定機を再三にわたって外していたというわけではなかった。

 そこでまず浮かび上がった問題は、1トップ上田綺世の迫力不足。存在感の希薄さにある。その原因は風格を感じさせない上田自身の問題に加え、彼が攻撃の軸になっていない攻めの在り方にあった。ヴィッセル神戸の大迫勇也、鹿島アントラーズの鈴木優磨になり得ていないのだ。周りを囲む選手のほうが主役に見えてしまう。

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