パリオリンピックに「丸腰」で挑んだ大岩ジャパン、スペイン戦の前半は高く評価できる (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【流れから崩されたわけではない】

 だが、後半開始からほどなくすると、日本の右のコンビネーションは、前半より円滑さを欠くようになっていた。関根は縦に出にくくなっていた。流れを失うことになった原因のひとつだとみる。もう少し山田を引っ張ってもよかったのではないか。結果論を承知で言えばそうなる。

 スペインに追加点を許したのは後半28分。左ウイング、セルヒオ・ゴメスのCKを、はるか後方に構えるフェルミン・ロペスが、図ったように蹴り込んだミドル弾だった。

 完敗の色を濃くすることになった後半41分の3失点目も、同じくセルヒオ・ゴメスの蹴った右CKから許している。大畑、交代で入った佐藤恵允がクリアし損ねたボールを、CFアベル・ルイスに押し込まれた呆気ない失点だった。

 日本贔屓を承知で言わせてもらえば、流れから崩されたわけではない。2点目、3点目はセットプレーからの失点だ。その昔、バルセロニスタは筆者にこう言ったものだ。「セットプレーの得点を喜ぶことほどはしたないことはない」。

 加えて言えば、フェルミン・ロペスが挙げた1点目も、その発端は山本からパスを受けた三戸のレシーブミスになる。プレスを許した産物である。それはそれで立派なゴールだが、スペインらしさを存分に発揮されて崩されたわけではまったくない。一方で日本はポスト&バー直撃弾も2本、放っている。絶望的な負け方をしたわけではない。むしろ前半の戦いに限れば、A代表を含めた過去のスペイン戦のなかで最高だった。

 だが、後半になって尻すぼみしたのは確かである。山田を早く下げすぎたことだけではない。左SBの大畑も、これまでに比べ元気がなかった。左は斉藤の単独プレーが目についた。前半の右に比べると、コンビネーションが働いていなかった。

 交代選手も弱かった。山田→藤尾(後半0分)、斉藤→佐藤(後半22分)、三戸→植中朝日(後半29分)、山本→荒木遼太郎(後半38分)と、大岩監督は4人を代えているが、彼らに局面を打開する期待感を抱くことができなかった。監督は5人枠を使うべきだが、使っていたとしても期待感は募らなかっただろう。

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