パリオリンピックに「丸腰」で挑んだ大岩ジャパン、スペイン戦の前半は高く評価できる (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 層の厚さがスペインとは違っていた。オーバーエイジの問題はともかく、あるレベルを超えた選手が、日本が5、6人だったのに対して、スペインはその倍はいた。試合運びに安定感があった理由だ。

 スペインに勝とうと思えば、オーバーエイジの使用は大前提となるが、日本はそれをしなかった。誰が決断したのか定かではないが、欧州組がダメなら国内組で、という選択肢もあったはずだが、それさえも断念した。出場した16チーム中、唯一である。

 つまり、日本の男子はこの舞台に丸腰で臨んだようなものだった。「メダルだ!」と気色ばむメディア報道も目立ったが、筆者はベスト8に入れば御の字だと見ていた。

 ブックメーカー各社の評価も当初は7、8、9番手あたりだった。ベスト8に進むかどうか、微妙なチームだと見られていた。しかし、ベスト8が出揃うとブックメーカーは日本を5番人気に据えた。グループリーグ3連勝を評価した結果だろうが、ブックメーカーの目はアテになるものと考える筆者にとって、この5番目という順位は順当に映る。

 引いた視点で考えれば、丸腰で臨みながらの「5位」は評価されるべき結果だろう。ユーロ2024を制したばかりの欧州チャンピオン、スペインに勝ったら、大事件、大番狂わせだったのだ。攻撃的な正統派のサッカーを披露した大岩ジャパンを、日本サッカーの普及発展に貢献するプレーぶりだったと評価したい。 

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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