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パリオリンピック男子サッカーイスラエル戦へ 絶好調・山本理仁の武器は技術だけではない (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【ベルギーで手に入れた新たな武器】

 2戦したボルドーはさほど暑くなかったものの、最大で今後4試合を戦うことを考えると、早いうちにリカバリーできる状況を作ったことは本当に大きい。

 山本は昨年夏、ベルギーのシント・トロイデンに加入した。日本から欧州へのファーストステップとして比較的プレーしやすい環境が用意されているクラブではあるが、当然ながらメンバー争いの厳しさはほかと変わらない。

 山本は昨季28試合に出場したものの、先発したのはレギュラーシーズン全30試合のうち5試合。最終順位を決めるプレーオフは全10試合のうち5試合でU23アジアカップのために不在だったが、残る5試合のうち先発は2試合にとどまっている。

 そんな苦しんだシーズンだが、山本は欧州に移籍した意義をこう語る。

「試合にはもっと出たかったですけど、でもなんか、充実感はあったかな。日本ではテクニックとかを求められますけど、こっち(シント・トロイデン)ではフィジカルやスピードを求められる。あんまりなかったことなので、新鮮というか、そういうところが成長しました」

 左利きの技巧派で鳴らしてきた、東京ヴェルディの下部組織育ち。スマートなプレースタイルのままでは欧州では通用しないことを体感し、それ以外の部分を成長させてきた。それを実感できたのは、4月のU23アジアカップだった。

「アジアカップでも、強度の高さはこれまでよりも出せたかなっていうのがあって、シント・トロイデンに来た意味は絶対にあるなと思っています」

 その強度をさらに高めたのがマリ戦。アジアだけでなく、世界相手にも通用することを証明して見せた。

 昨季はガンバ大阪からのレンタル移籍だったが、期間が終わる今夏には完全移籍を勝ち取った。出場時間こそ長くはなかったが、これはひとつの評価と期待の表われだ。

 これまでの代表活動でも「強豪相手の試合にはスカウトがたくさん来ると聞いていて、俺らはメラメラしていましたよ」という山本。今後の飛躍のきっかけになり得る五輪の舞台で、より多くの試合をすることと、さらなるステップアップを目指していることは間違いない。

著者プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

【写真】パリオリンピックに臨むなでしこジャパン・北川ひかる

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