田中陽子はなでしこジャパンをどう見ているのか「初招集の頃は難しさを感じたのを今でも覚えてます」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【韓国での日常会話は問題ないです】

――田中さんはピッチ上でも、すごく周りとコミュニケーションを取っていますが、韓国語のほうは?

 今、聞く、読む、書く、日常会話は問題ないですね。表現が日本語と似てるんです。なんかカワイイんですよ。だから面白くて。すべてが楽しいので、息抜きは必要ないかも(笑)。でもカフェにもサウナにも行くし、美容大国ならではの楽しみもありますし、ゴハンは美味しい!

 日本から近いけど、意思表示は日本より明確にしないといけないし、言葉や環境が違う感覚は海外と同じです。韓国はプロリーグじゃないから興行的なところもシビアでなくて観客は少ないんですけど、プレー環境はおそらく日本よりも整っていると思います。だから、(本格的な)海外移籍の前段階として臨むのもいいんじゃないかと思うんですよね。

――韓国も2年目。そろそろ次の移籍を考えてウズウズしてくる頃でしょうか。今後日本でプレーする可能性もありますか?

 チャレンジしたいことがあれば、それは日本でもどこでも関係はないですね。ただ、今のこの環境にめっちゃ満足してるから、現段階では特にこうしたいっていうのがまだ出てこない。そういうマインドが生じて移籍の流れが来るのがいつものパターンなので、流れが来なかったら、もうしばらく韓国でがんばるかもしれません。

――まだまだ田中選手には伸びしろを感じます。

 韓国では、外国籍のボランチがゲームをコントロールすることがないからこそ、そこにチャレンジする楽しさがあります。難しいからこそ楽しい! 問題が生じた時、その解決策を見つけるのが楽しいんです。新しい発見ってワクワクするでしょ? 何も発見できないほうがつまらないですよ。今こういう状況、自分の問題はなにか、チームや相手の問題はなにか、すべての状況を見ながら改善して、トライしてみると見えてくるものがあるはずですから。

韓国での今のプレーは「難しいからこそ楽しい!」という田中陽子 photo by Hayakusa Noriko韓国での今のプレーは「難しいからこそ楽しい!」という田中陽子 photo by Hayakusa Norikoこの記事に関連する写真を見る――常に分析するんですね。

 分析できないと何も解決できないからですね。まずは自分を見て、全体を見る。チームメイトにはここまで詳しくは伝えないけど、やる姿は絶対に見せる。サッカーの場合はそれが結果として見えるからいいですよね。話すことと見せること。そこまでやって解決しないなら、ここではなくほかに問題がある。逆にここまでやったんだからって、自分の出した結論に対する自信にもなります。

――大概の人はそうした過程を苦しいと感じるのだと思います。

 それがいいのに! あ~、でも周りからはよく変態だと言われます(笑)。自分でも自覚はあります。サッカーだけでなく、すべてにおいて変態的に取り組むタイプみたいです(笑)。
(おわり)

田中陽子 
たなか・ようこ/1993年7月30日生まれ。山口県山口市出身。中学からJFAアカデミー福島に所属。2010年のU-17女子W杯では準優勝に貢献。2012年INAC神戸レオネッサに入団。同年に日本で行なわれたU-20女子W杯で活躍、3位の原動力となった。2015年にノジマステラ神奈川相模原に移籍し4シーズン半プレー。2019年からはスペインへ渡り、スポルティング・ウエルバ、ラージョ・バジェカーノ・フェメニーノに所属。2022年からは韓国の仁川現代製鉄レッドエンジェルズでプレーしている。

プロフィール

  • 早草紀子

    早草紀子 (はやくさ・のりこ)

    兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る