サッカー日本代表の進化は「不透明なまま」9月の最終予選へ 攻撃的3バックはどこまで通用するのか (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi

【チャンスを作ったのは縦に速い攻撃から】

 では、日本がどのような攻撃でチャンスを作っていたかというと、2点目の堂安のゴールに象徴されるように、そのほとんどが縦に速い攻撃から。つまり、ボールを握ることを目指した攻撃的3バックのテストとしては、思惑どおりの内容ではなかったとも言える。

 もっとも、そのような試合展開になった主な要因は、シリアの戦い方にあった。

「我々は非常にリスクの大きいことをピッチの上で試みた。なぜなら、今日は何としても試合に勝たなければいけなかったからだ」

 試合後の会見でそう語ったのは、シリア代表を率いるエクトル・クーペル監督。かつてバレンシアやインテルを率いたアルゼンチンの名将のひとりである。曰く、彼らの敗因は「我々が思い描いていたプレスをかけられず、それによってスペースが空き、そのスペースを利用された」とのこと。日本に負ければアジア2次予選突破が絶望的となってしまうため、イチかバチかの賭けに出たわけだ(最終的にシリアは予選敗退が決定)。

 実際、今年のアジアカップでベスト16入りを果たしたシリアは、前節の相手ミャンマーと違って引いて守ることをせず、立ち上がりからできるだけDFラインを上げて日本陣内でプレーしようとし、この試合のファーストシュートも記録した。ただ、それによって日本は攻撃のためのスペースを容易に見つけられ、効果的に縦に速い攻撃を繰り出すことができた。

 しかもクーペル監督が採用した4-4-2は、日本の3-4-2-1とのかみ合わせが悪いとされる布陣のひとつ。日本から見ると、相手の2トップに対して最終ライン3人で対応できるため、プレスを浴びずに難なくビルドアップ可能な状況だった。そのなかで、日本はGKを含むビルドアップ時に冨安が右サイドの高い位置に立つという工夫も見られるなど、ほぼパーフェクトなプレス回避ができていた。

 そもそも、ボールを握ってポゼッション率を高めることではなく、あくまでもゴールを奪うのが最大の目的ゆえ、その意味ではこの試合の前半における日本の縦パスやクロス本数の少なさは、逆に攻撃の効率性を表していると言える。

 ただし、引いて守る相手に対して、両ウイングバックにアタッカーを配置した3-4-2-1がどこまで攻撃性を高められるかという点については、残念ながらと言うべきか、この試合でテストすることはできなかった。

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