久保建英にシステム変更のストレスなし シリア戦は「楽しみたいより楽しませたかった」 (3ページ目)
後半はややペースダウンしたが、それも適応の結果だったと言える。前半から田中碧との連係は良かったし、右に敵を集めて左の南野に出したパスも絶好だった。
「後半も、(チームメイトとは)『楽しかったね』って話していました。3-0になって、攻めなければいけない試合展開じゃなかったので、前半に比べるとセンターバックとサイドバックでパスが行き来するというのは、見ている人からしたら少し退屈だったのかもしれませんが、攻め急いでのカウンターはまずいので、あれでよかったんじゃないかなって思います」
あらためて、久保は格の違いを見せた。フォーメーションやポジションに左右されない。それは一流のカーレーサーが、どんな車を与えられても、自在に最大の出力を出せるのに似ているか。
「(3バックに関しては)本当に強い相手とやらないと、正解かはわからないですね。今は見守るというか、試したことに価値があって、どうなっていくのか楽しみです。最終予選は厳しい戦いになるでしょうけど、本当に強い相手はもうひとつ上にいるので。まあ、引いてくる相手には有効かなと」
久保はそう言って、すでに先を見据えていた。
「今シーズンは長かったですね」
そう語る口調に実感がこもった。主力が突然いなくなったラ・レアルを牽引し、自身初のCLを戦い、アジアカップを挟みながら、最後はヨーロッパリーグ出場権を勝ち獲り、2026年W杯アジア最終予選へと向かう。
「来季のことはシャットアウトして考えていません。どうなるにせよ、今シーズンは達成できなかった二桁得点の目標をクリアできるように......」
しばらくは翼を休める時間だろう。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
フォトギャラリーを見る
3 / 3