狡猾なカタールに苦しめられたU-23日本代表は公平なレフェリングによって救われた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 サイドを深くえぐるシーンを増やした日本は、後半アディショナルタイムの90+6分に、山田楓に代えて荒木遼太郎を投入してトップ下に置き、2ボランチの一枚である山本理仁を右サイドに出す。サイド攻撃を得点として完結させるべく、必要な手が次々と打たれていった。

 だが、それは同時に、決勝ゴールに至る壮大な伏線でもあった。

 日本の両サイドからの攻撃が迫力を増し、カタールディフェンスの足が止まり始めていた延長前半11分、ボランチの藤田譲瑠チマがバイタルエリアで待つ荒木に縦パスを差し込むと、荒木は振り向きざま、細谷へスルーパスを通す。

 所属する柏レイソルでも今季無得点と悩めるストライカーは、「後ろにディフェンスも(背負って)いたなかで、あのファーストタッチができたのはパーフェクトだった」と自画自賛する絶妙なトラップでDFラインの背後に抜け出すと、最後は右足で落ち着いてシュートを流し込んだ。

 殊勲の背番号19が語る。

「サイドからの攻撃が多かったので、結果論にはなるが、それをカタールが警戒していれば、真ん中が開いてくるなとは思っていた。その一個のチャンスで決められてよかった」

 その後、延長後半7分には、細谷に代わってピッチに立った内野航太郎にもゴールが生まれ、4-2。事実上、勝負が決した瞬間だった。

 最高気温が30度を超える環境のなか、120分間を粘り強く戦い抜いた選手たちを、大岩監督が称える。

「(カタールが)ひとり少なくなって、よりスペースがなくなったなかでも、焦れずに相手にジャブを打っていくんだという話はしていた。選手たちはそういう頭で(狙いどおりに)プレーしてくれたんじゃないかなと思う」

 パリ行きのチケットを手にするまで、あと1勝。若き日本代表が8大会連続の五輪出場へ王手をかけた。

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