狡猾なカタールに苦しめられたU-23日本代表は公平なレフェリングによって救われた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 前半アディショナルタイムの45+5分、ヘディングでの競り合いの際に、木村がイエローカード(ジャンプした木村のヒジが相手選手の顔に当たった)を受けると、以降、カタールはゴールキックを含めたロングボールを木村に集め、ヘディングで競り合った選手が痛がって倒れるという行為を繰り返した。

 言うまでもなく、木村を2枚目のイエローカードで退場させようというわけだ。

「ゴールキックの時は(もうひとりのセンターバックである高井)幸大と位置を入れ替えて、幸大に競ってもらおうと思ったが、(カタールが)入れ替えたところを見て僕のほうに蹴ってきたので、これは完全に狙われているなと思った」

 そう語る木村も、「ちょっとナーバスになった部分はある」と振り返る。だが、「ファールになったとしても、イエローカードをもらわないような競り方をしていれば、主審もちゃんとジャッジしてくれていた」と木村。

 後半22分に決めた値千金の同点ゴールもさることながら、判定との恐怖と戦いながらも決してプレーが小さくなることなく、最後まで相手の攻撃をはね返し続けたセンターバックは、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるにふさわしい出色の働きだった。

 結局、日本は木村を含めてひとりの退場者も出すことなく、試合終了まで戦うことができた。むしろ、前半41分にGKユーセフ・アブドゥラーがレッドカードで退場(ゴール前の競り合いでジャンプした際、細谷真大の腹を蹴った)となるなど、それまでとは勝手の違う厳しい判定に悩まされたのは、カタールのほうだったのかもしれない。

【悩めるストライカーが殊勲のゴール】

 レフェリーの判定さえ"普通"なら、カタールがそれほど恐れる相手でないことは、すでに記したとおりである。

 試合開始早々に山田楓喜のミドルシュートで先制しながら、ひとり少ない相手に逆転を許したことには課題が残るが、木村のヘディングシュートで追いついてからは、じっくりと両サイドから攻撃を仕掛け、カタールを疲弊させ、延長戦も含めた120分でカタールを仕留めることに成功した。

 その間に見せた、大岩剛監督の采配も的確だった。

 5バックで守備を固める相手に対し、後半開始とともに藤尾翔太を2トップの一角で投入し、サイド攻撃の狙いを明確にすると、後半83分にドリブラーの平河悠を投入し、さらなる圧力をかける。

「このチームにはドリブルで違いを出す選手が数少ない分、自分はそこで勝負したいというか、アクセントになりたい。結果的に(自分のドリブルやクロスが)得点にはつながらなかったが、相手が嫌がることはできたかなと思う」(平河)

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