サッカー日本代表は6月のW杯予選消化試合をどう有効活用すべきか 識者4人のアイデアとは (4ページ目)

 もちろん、どんな相手にも適応できる万能チームなど、世界的に見ても、そうそうあるものではない。

 しかしながら、これだけ得意、不得意がはっきりしている現状を放置していれば、大幅に出場枠が拡大したアジア予選はともかく、W杯本大会での勝ち上がりは難しくなる。

 というのも、次回W杯では、胸を貸してくれる横綱よりも、いやらしい戦いを仕掛けてくる"小結"あたりとの対戦が増える可能性が高いからだ。

 W杯は、次の2026年大会から出場国が従来の32カ国から48カ国に拡大。グループステージは、4カ国ずつの12グループに分かれて行なわれる。

 従来の8グループなら、たとえばアルゼンチンやブラジルのような、過去にW杯優勝を経験している強豪国がほぼ必ず1カ国は入っていたが、12グループに分かれるとなると、それらの国がひとつも入らない可能性も十分に出てくる。つまり、ヨーロッパなら旧ユーゴスラビア勢、南米ならウルグアイやコロンビアといった、フィジカル能力に恵まれ、相手の弱点に対して割りきった戦いができる国との対戦が増えてしまうかもしれないのだ。

 実際、前回大会での日本が、ドイツとスペインには勝ったが、コスタリカとクロアチアには勝てなかったことからもわかるように、今の日本にとっては、むしろやりにくい相手との対戦が増える、と言ってもいいのかもしれない。

 それを考えると、多少の得意、不得意があるのは仕方がない、などとは言っていられなくなる。

 ただし、日本が戦術的な修正を図るには、シリアやミャンマーが相手では物足りない、という現実もある。

 もしもシリアが、イランをギリギリまで追い詰めたアジアカップのときのような迫力ある攻守を繰り返してくれるならいいが、日本のホームゲームでそれを望むのは難しいだろう。

 結局のところ、"消化試合"でやれるのは、まずは主力のヨーロッパ組を休ませてあげること。同時に、Jリーグ組をはじめとする新戦力の登用を行なうことではないだろうか。
(つづく)

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

  • 浅田真樹

    浅田真樹 (あさだ・まさき)

    フリーライター。1967年生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る