サッカー日本代表は6月のW杯予選消化試合をどう有効活用すべきか 識者4人のアイデアとは

ミャンマー戦、シリア戦利用術(前編)

 FIFAの裁定により、没収試合として0-3で日本の勝利扱いになったアウェーの北朝鮮戦。これにより、あっけなく日本のW杯アジア最終予選進出が決まった。消化試合となった2次予選の残り2試合、ミャンマー戦(6月6日)、シリア戦(6月11日)をどう戦うべきか。これまで長く日本代表を取材してきた4人のジャーナリストの提言とは――。

「予選突破ならU-23代表で臨むという考え方も」
杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 ミャンマー戦、シリア戦が行なわれる6月は、欧州サッカー界にとってはシーズンオフにあたる。日本代表において8~9割を占める欧州組をフルに招集しやすいタイミングではある。だが、この消化試合にバリバリのA代表を送り込むのはナンセンスだ。無駄遣いであると同時に、代表強化にとって非効率。国内組中心で臨むべきだと考えるが、長友佑都(FC東京)に象徴される経験豊富なベテランも呼んではいけない。若手を中心としたメンバーで十分。東アジアE-1選手権に近いスタンスで臨むべきだと考える。

 代表歴の浅い若手、もっと言えば、まだ代表に1度も選出されたことがない選手を数多く選ぶべきだと考える。新たな代表選手を誕生させるいい機会だと捉えたい。代表キャップはひとつでも立派な勲章だ。自らを売り出す際には立派な看板になる。なにより欧州クラブの目に留まりやすい。年俸や移籍金など、金銭面でもいい影響が出る。

 欧州組の数はいまや100人に迫ると言われる。日本人選手が事実上、欧州サッカーに育てられている現状を踏まえると、ひとりでも多く欧州組を誕生させることが代表強化の近道になる。欧州へ羽ばたくチャンスを狙う若手選手を後押しする場として、この2試合を活用すべきなのだ。

W杯アジア2次予選突破を決めた日本代表 photo by Sano MikiW杯アジア2次予選突破を決めた日本代表 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 五輪チーム(U-23日本代表)が4月に行なわれるパリ五輪予選(AFC U23アジアカップ)を突破していれば、そのチームで臨むという考え方もある。五輪本番の予行練習に充てるのだ。オーバーエイジを加えてもいい。五輪チームの問題は、何より試合数が少ないことだ。中2日の強行軍を、わずか18人で戦うという五輪の本大会のレギュレーションも輪をかける。選手選考でその成否はあらかた決まるといっても言いすぎではない。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

  • 浅田真樹

    浅田真樹 (あさだ・まさき)

    フリーライター。1967年生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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