日本代表に「狂いを生じさせていたプロセス」をスペインの名指導者が分析 北朝鮮に苦戦した要因

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「前半終了間際に、日本はこの日、最高のプレーが出ている」

 スペインの目利き、ミケル・エチャリはそう言って、森保ジャパンの北朝鮮戦での狙いを見定めている。日本が1-0で辛勝するも、どこか危うさもある試合だったが......。

「南野拓実がプレスバックから自陣で相手ボールを奪い返すと、すぐに敵ゴールに向かって運んでいる。上田綺世につけた後も南野は走り続け、バックラインの前でリターンを受け、堂安律にスルーパス。堂安のシュートはブロックされて入らなかったが、迅速かつ効率的な攻撃だった。いい守りがいい攻撃に直結し、チームの特徴がよく出ていた。前半はこうしたコンセプトがよくプレーに反映され、選手の反応もよかった。唯一足りなかったのは、決定力だ」

 エチャリはそう言いきる。

 ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)、ウナイ・エメリ(アストン・ヴィラ)、ハゴバ・アラサテ(オサスナ)、フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸)など名将たちに敬愛されるエチャリは、"森保ジャパンの現在"をどう分析したのか?

北朝鮮戦では何度かあった決定機を決められなかった堂安律 photo by Kishiku Torao北朝鮮戦では何度かあった決定機を決められなかった堂安律 photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る「前半、日本は南野がトップ下、上田がトップ、右に堂安、左に前田大然という前線の構成で、ストライカー的性格の選手を多く並べた印象だった。早い攻撃から、4人の得点力を生かす意図があったのだろう。事実、キックオフ後は繰り返し縦に蹴って、そこから押し込み、いくつもチャンスを作っている。

 開始早々、2分には先制に成功した。バックラインから前田に長いボールを入れ、上田が左に流れながら回収して、ゴールライン近くまで持ち込む。そこから田中碧がサポートし、逆サイドの堂安にクロス。その折り返しを南野へ、ボールはこぼれるも、再び堂安がマイナスのクロスを入れ、これを田中が蹴り込んだ。

 素早く間断のない、厚みもある攻撃だった。

 前半、日本のボール支配率は7割を超えていたはずで、明らかに優勢だった。そして冒頭に記したように、堂安は少なくとも3度は決定機を迎えていた。他にもゴールに迫ったシーンはいくつもあって、完全にペースを握っていたはずだが......」

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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