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サッカー日本代表の選考に残る違和感の象徴 長友佑都に代わる選手はいないのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 ワールドカップ8大会連続の本大会出場がかかったバーレーン戦、サウジアラビア戦に向けたメンバーが発表されている。中山雄太(FC町田ゼルビア)、町野修斗(キール)が追加招集され、27人が決まった。現時点でのベストメンバーを集めたのだろうが......。

 本当にベストか、と問われると、どこか違和感が残る。その象徴がFC東京の長友佑都である。

 森保一監督は「ポイント」を重んじる指揮官と言えるだろう。これまで、どれだけ森保ジャパンに貢献してきたか。その実績をポイント化したような選考が透けて見える。それ故にあまり顔触れが変わらない。ポイントを上げるには、まずは森保ジャパンに選ばれないといけないのだが、森保ジャパンで経験を積んでいる選手との差はなかなか縮まらないのだ。

 その結果、プロサッカーという興行においても必要な「新鮮さ」「旬」を欠いた選考になり、ニュース性も乏しい。目の前の実益を考えれば、必ずしも顔ぶれを変えることは推奨できないのかもしれない。それでも多くの日本人選手にとって、「次は自分が選ばれるかも」というモチベーションを与えることは、巨大な燃料を流し込むはずだ。

 だが、森保監督は「ポイント」を重視し、そこはかとない停滞感を蔓延させている。残念だが、長友はその象徴と言える。

今季はここまで4試合に先発している長友佑都(FC東京) photo by Kyodo news今季はここまで4試合に先発している長友佑都(FC東京) photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る 長友はサイドをアップダウンし、敵に主導権を与えないサイドバックだった。2010年の南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯、2018年ロシアW杯、2022年のカタールW杯に出場。2011年の前後はワールドクラスのサイドバックで、その実績は他を凌駕する。カタールW杯でも、"自分の得意を最大限に出し、衰えを極力出さない"という老練さを見せた。

 だが今シーズンのJリーグで、長友のパフォーマンスは、左ウイングバックとして好意的に言って平均レベルだろう。勝負に対する熱量は衰えず、そのエネルギッシュな戦いは特筆に値し、顔つきは断然いい。30代後半の選手としては、走行距離やスプリントも脱帽するレベルだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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