三笘薫、伊東純也の代役が町田にいた 多機能ウインガー・平河悠の日本代表招集に期待 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【三笘を彷彿とさせるアクション】

 172センチ70キロ。乾貴士、中島翔哉、本山雅志のいいところを足して3で割った、いかにも向こうっ気の強そうな小兵のドリブラーだ。低重心。ドリブルのフォームに安定感がある。

 続く7分には、対峙する鹿島の右サイドバック(SB)濃野公人と1対1になるや後ろ足(右足)の内側でボールを繊細に操り、引きずるように運びながら縦抜けを図ろうとした。三笘を彷彿させるようなアクションである。しかも、三笘がほぼ右足1本でドリブル突破を図るのに対し、平河は左足も使う。より細かなタッチで相手の懐に潜り込み、いったんボールを隠すような動きから縦にボールを持ち出したのだが、その最後のタッチは左足のインサイドだった。

 鹿島の濃野はどうすることもできず、縦抜けを決められ、左足でマイナスの折り返しを許した。ゴール前で町田FW藤尾翔太にボールが渡る寸前、鹿島の左SB安西幸輝がスライディングでクリアしたが、これも鹿島の試合の入り方に大きな影響を与えたプレーだった。

 前半13分の先制弾は、その流れから生まれた。決めたのが平河であることは先述のとおり。中盤で鹿島の日本代表MF佐野海舟からボールを奪った流れで、MF柴戸海、FWオセフンと経由したボールが平河の前にラストパスとなって送られてきた。

 右足でボールを押し出し、角度を作りながら蹴り込んだその左足弾は、番狂わせを意味する決勝点でもあった。「試合の入り方が悪かった」(ポポヴィッチ監督)原因の多くは、紛れもなく平河のプレーと関係があった。

 ご承知のとおり、ポポヴィッチは前町田監督(2020~2022年)だ。山梨学院大から町田の特別指定選手になった平河の元監督である。番狂わせの立役者として教え子に噛みつかれた恰好となったわけだ。

「今日は彼にやられた。能力的には近い将来、日本代表入りしてもおかしくない人材だ」と、ポポヴィッチは試合後の会見で、渋面を作りながらも平河に賛辞を送った。

 だが、平河は日本代表どころか、大岩剛元鹿島監督率いる五輪代表チーム(U-22日本代表)にも、まだ1度しか選ばれていない。出場も、昨年のU-23アジアカップ予選パレスチナ戦1試合のみだ。そのお眼鏡にはかなっていないようだ。

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