日本代表 イラン戦の敗因を徹底分析「苦手な戦い方がある」「森保監督の悪いクセが出た」 (4ページ目)

【ベンチが無策というのは選手もストレス】

――不調だった板倉は、早く交代させるべきでしたか?

清水 1-1にされたのが後半10分だったので、ちょっと早いんですよね。これがもうちょっと時間が進んでいたら交代かなという感じはしますけど、難しいですね。

西部 後半、板倉は裏を取られる場面が2、3回あったので、もう早い時間に僕は代えるべきだと思いました。まあ、板倉自身を代えるか、センターバックを3枚にするか。とにかく何かフィールドを助ける動きをしないと、「これどうする?」ってなったまま選手で考えろというのは、非常に難しい。無理だと思いますよ。

 具体的にどうするかとしっかりやって、その結果が当たるか当たらないかはあるけれども、無策というはやはり心理的にもストレスになりますから。

清水 板倉は明らかに様子がおかしかった。ロングボールを蹴られた時に、冨安はその直後にも高速の首振りでちょっと周りを見るんですけど、あの日の板倉はボールばかりに目が行っちゃって、相手が後ろから来て体をぶつけられそうになっても気づかないんですよね。

 それが何度もあって狙われていたので、だったら手を打つ。選手を代えるなり、システムを変えるなりは必要だったかなと思いますね。

西部 あとは全体的にロングボールを蹴らせないようにするためには、やはりもう少しポゼッションを上げないといけない。

 攻め込んで相手を押し込んでしまえば、ロングボールってハーフウェイラインぐらいまでしか飛んでこないのでほとんど脅威にならない。それが理想的なんですが、そのへんの戦い方はもっと整理しなきゃいけないですよね。

清水 日本は縦にすごく速いんですよね。イラン戦でも自陣やハーフウェイライン付近で奪ったボールを、ここはカウンターは無理だから一度立て直して中盤なり逆サイドなりと、守田あたりが展開を考えていそうなタイミングでも、ポンポン縦に入れてボールを失っていた。このやり方だと、人数をかけて相手を押し込むのは難しいです。

 インドネシア戦やバーレーン戦ぐらいだと、それでも日本が全然押しきれちゃうんだけど、相手がイランぐらいになると、もうどんどん日本が疲れていくだけという。相手のペースにハマっていったので、そこの対応力は必要ですね。

 やっぱり押しきれないんだなってことが、よくわかりました。これだけ親善試合10連勝とかで輝きまくっていても、やっぱりこういう敵には押しきれないんだなと。

西部 それと日本の強化プランから言うと、アジアカップはちょっと戦いにくい大会であるのは事実です。要はつないでくるチームには強いわけですよ。そして蹴ってくるチームには弱い。

 その落差が大きいので、そこをどうするとなった時に、前からどんどんプレスに行って相手に蹴らせもしないし、蹴らせる時は苦し紛れにさせると答えを用意した場合に、やっぱり70%ぐらいはボールを持たなきゃいけないんですね。

 でも、そのための仕組みを日本は持っていないし、そんなにハイプレスに全振りするような守り方も実はしてない。つまりミドルゾーンの守備を捨てていないんですよ。それはつないでくるチームにはすごく有効なんだけど、蹴ってくるチームはミドルゾーンで待っててもそこはすっ飛ばしてくるわけだから、日本の一番の強みは出ない。

 そういうところが、今回戦いにくい理由ではあったと思いますね。

 つまり、日本の立ち位置って、やはり世界のトップではない。トップに勝てるチームではある。ということは、自分たちよりちょっと弱いチームに負ける可能性もある。もうはっきり出ちゃったなと。

清水 これも次のワールドカップを見据えると、すごく大変な、デカい問題ですよね。

 48カ国出場だと、今度のグループステージはコスタリカみたいなチームが同グループにふたついる可能性があります。これはかなりデカい問題がしっかり露呈したなとは思いますね。

プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

  • 清水英斗

    清水英斗 (しみず・ひでと)

    1979年岐阜県生まれ。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書に『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中央公論新社)、『サッカー好きほど知らない戦術の常識』(カンゼン)など。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る