日本代表の「衝撃的敗戦」はなぜ起きたか 機能的な攻撃のなさが守備崩壊を招いた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【勝利チームのような采配】

 試合の形勢は時間の経過とともにイラン側に傾いていく。逆転弾を浴びるのは時間の問題にしか見えなかった。ところが森保監督は動かない。名波浩コーチをはじめ、ベンチのスタッフは大声で選手に指示を飛ばすも、森保監督はベンチ脇に佇むばかり。固まって動けないという感じだ。アディショナルタイムに入ってもなお、90分の戦いではまだ3枚残っている交代カードを切らなかった。

 3日前に行なわれたバーレーン戦の終盤、2点差でリードしているにもかかわらず5バックで守りを固めた森保監督だが、あの作戦はいったい何だったのか。今さらながらその無意味さ、意味不明さを思わずにいられない。

 アディショナルタイムの日本は、流れから見て逆転弾を浴びる必然性が高かった。こう言っては何だが、感想は、「やっぱり」だった。

 残り時間1分あるかないか。この再開キックオフのタイミングで、森保監督は、守田英正と堂安律に代え、細谷真大と浅野拓磨を投入。交代枠をひとり余したまま、そのまま日本は試合を終えた。

 交代選手の出場時間は、4人合わせても56分間(アディショナルタイム含む)しかなかった。それはまるで勝利チームのような采配だった。

 試合後、選手が囲む輪のなかで、大きなジェスチャーを交えながら語りかける森保監督の演説を出場機会が与えられなかった選手は、どんな思いで聞いていただろう。打つ手なし。無為無策と言われても仕方がない監督采配に呆れ、地団駄を踏む選手がいたとしても不思議はない。

 相手のイランはパワープレー、放り込み中心の旧態依然たるサッカーをしていた。勝者を悪く言うつもりはないが、本来、2点差をつけて勝たなければならない相手だった。日本がちゃんと戦えば、それはできたと筆者は考える。

 森保監督は自信がないのだろうか、サッカーの中身について、具体的な話も哲学的な言葉も出てこない。就任当初より会見ではよく喋るようになったが、こちらのサッカー観を触発されるようなフレーズは滅多に出てこない。「いい守備からいい攻撃へ」は、その数少ないひとつになる。

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