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ブラジルW杯の代表にサプライズ選出された大久保嘉人が「負の連鎖」が始まった瞬間を明かす (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

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 チームに合流すると、大久保は鹿児島合宿の練習メニューに面を食らった。Jリーグはシーズン中だったため、自身のコンディションに問題はなかったが、欧州組はシーズンが終わったあとで束の間のオフにあった。彼らのコンディションを上げるために、かなり負荷のかかったトレーニングメニューが入っていたからだ。

「俺らJリーグの選手は、シーズン中でコンディション的には仕上がっていたので、むしろ試合続きのなかでの疲労を抜くための、戦術的な練習をやるのかなと思っていた。それが、いきなり坂道ダッシュとかさせられて、『なんで、この時期に!?』って思った。

 それで、自分も含めてみんな、かなり疲れてしまった。強度の高い練習で疲労が抜けず、誰もがもうひとつ調子が上がらないまま、大会に入っていくことになった。今思うと、ここから"負の連鎖"が始まったというか、ここが大きな失敗だったと思う」

 外から見ている分には、主力選手たちが自由にプレーしているように見えた攻撃の練習も、実際はイタリア人監督が指揮するだけあって、ポジションを含めていろいろな制限があった。守備においても、決まり事は多かった。

 そんななか、大久保は「何となくこんな感じ」というレベルでその戦術を把握。W杯本大会に臨んでいった。

 ブラジルW杯が開幕。日本の初戦はコートジボワール戦だった。大久保はスタメンではなく、ベンチからのスタートとなった。

「南アフリカW杯の初戦の時は、『もうこれ以下はないだろ』って感じで、捨て身で(試合に)入っていった。でもブラジルW杯の時は、海外でプレーしている選手が多かったので、自信を持っていたし、『俺ら、勝てるやろ』『大丈夫やろ』みたいな雰囲気だった」

 本田の先制ゴールは、その自信の表れのように感じられた。南アフリカW杯の時と同様、そこまでは「ブラジルW杯も本田の大会か」と思うほどの勢いがあったという。

 しかし、試合は1-0のまま膠着した状態で進んだ。すると後半17分、コートジボワールが動いた。エースのFWディディエ・ドログバがタッチラインに立った。

 それを見て、交代出場の準備をしていた大久保は「同じタイミングで入りそうだな」と思った。だが、大久保にはベンチから「待て」の声がかかった。大久保は「もう入ったらええやん」と通訳に言ったが、ベンチの決断は変わらなかった。

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