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U-17日本代表が決勝T1回戦で涙も日本代表の未来を明るくする望外の「感覚」を得た (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 ところが、「やっぱり後半、ガクッと運動量が(落ちた)」と森山佳郎監督。ここからもう一段階ギアを上げる余力は、日本に残されてはいなかった。

 後半74分に失った決勝点だけを切り取れば、一瞬のスキを突かれたものではあったが、それ以前にも何度か危ういシーンが続いていたことを考えれば、生まれるべくして生まれたゴールと言ってもいいだろう。

 結果的に余力の有無、つまりはコンディションの善し悪しが勝敗を分ける重要な要素となったこの試合。しかしながら、それは試合前から十分に予想されていたことでもあった。

 スペインはグループリーグ第1、2戦で、いずれも相手に退場者が出るなか、連勝で早くもグループリーグ突破を決めると、メンバーを大幅に入れ替えた第3戦は引き分けたものの、悠々のグループ首位通過。

 一方の日本は、第1戦を勝利するも、第2戦は敗れて敗退危機に。結局、第3戦を勝利して3位通過を果たしたものの、消耗度の大きい試合を重ねていたのは確かだった。

 こうして両者は、決勝トーナメント1回戦で顔を合わせることになったわけだが、グループリーグ第3戦から中3日のスペインに対し、日本は中2日。移動なしに同じ会場で戦えるスペインに対し、日本は総移動距離およそ700㎞を2日かけての大移動。試合が行なわれるスラカルタに入ったのは、試合前日の午後のことである。

 ただでさえ、こなしてきた試合の"濃さ"が違うのに、そのうえ、これだけのハンデを背負わされてはコンディションに差が出るのも仕方のないことだろう。

 森山監督自身、過去2大会でいずれも決勝トーナメント1回戦敗退に終わった経験を踏まえ、大会前にはこんなことを話していた。

「そこ(決勝トーナメント)でギアをひとつ、ふたつ上げるチームでないと上に勝ち上がっていけない。『そこに入ってからが本番だよ』と言えないようでは、準決勝、決勝を狙える戦いはできない」

 図らずも指揮官の指摘が的中してしまった格好だ。

 とはいえ、臨戦過程の違いばかりに目を向け、この結末を不運で片づけてはいけないのも確かだろう。それも含めて、乗り越えていかなければならない世界の壁である。

 実際、FIFAの公式記録に目をやると、不運な敗戦とは言えない側面も見えてくる。

 たとえば、この試合のパス成功率は、スペインの90.6%に対し、日本は78.1%。日本は内容がよかった前半だけを取り出してみても82.9%に過ぎず、前後半ともに90%を維持したスペインとは成功率に明らかな差があった。

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