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U-22日本代表がアルゼンチンに大勝も露呈した日本サッカーの構造的問題 大岩ジャパンに期待すること (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【アルゼンチンとの差は縮まったが...】

 記憶に鮮明なのは2004年、アテネ五輪に臨んだアルゼンチンだ。今回、監督としてやってきたハビエル・マスチェラーノがキャプテン格で、監督はマルセロ・ビエルサだった。武器は3-4-3の布陣から仕掛ける"ダブル・ウイング攻撃"で、ウイングバックとウイングが敵陣をえぐりまくる超攻撃的サッカーだった。結果は優勝。対する山本昌邦(現ナショナルチームダイレクター)監督率いる日本はグループリーグ最下位に終わった。

 当時の日本とアルゼンチンは、3レベルぐらいの差があった。この20年弱で、日本はその差を2レベルほど詰めたと見るが、サイドに対する概念は変わらず、だ。山本ジャパンの布陣はサイドアタッカーが両サイドに各1人しかいない3-4-1-2だった。同じ3バックでもアルゼンチン型(ビエルサ型)とは天と地ほどの開きがあった。

 その名残が20年近く経ったいまでも、伝統として残っている。今回の一戦を見て、あらためてそう感じた。森保ジャパンがちょくちょく披露する3バックは非ビエルサ的だ。4-3-3、4-2-3-1に布陣を変えても、真ん中重視の癖は残る。森保ジャパンの概念を払拭するサッカーを大岩ジャパンはどこまで追求できるか。

 それは「中盤はサイドにあり」と言うべき横崩しサッカーだ。マンチェスター・シティで言えば、両ウイングにベルナルド・シルバ(右)とジャック・グリーリッシュ(左)の技巧派ウイングが並ぶと、パスはその周辺で有機的に回る。奪われてもカウンターを浴びにくい場所(自軍ゴールから遠い場所)なので、濃いプレーにトライする余裕が生まれる。

 大岩ジャパンはサイドの概念さえ正せば、サッカーの質で森保ジャパンを上回る可能性が出てくる。安定感のある王道を行くビルドアップができる。期待したい。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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