日本代表、W杯2次予選の招集メンバーは? 識者が断じる欧州組「総動員」の愚 (3ページ目)

【代表でもプレータイムの管理を】

「ステークホルダーは時代の変化に対応を」

中山淳●文 text by Nakayama Atsushi

 W杯予選は何が起こるかわからないので、毎試合ベストなメンバーを編成したい。現場を預かる監督やコーチングスタッフが、そんな気持ちになるのも理解できないわけではない。しかし、それにしてもアジア出場枠が「4.5」から「8.5」にほぼ倍増した今回のW杯アジア予選のレギュレーションを考えれば、従来と同じ考え方でチームを編成することに賛同できないのも事実だ。

 少なくとも、シリア、北朝鮮、ミャンマーと戦うアジア2次予選は、ベストメンバーで挑まなければいけない理由は、ビジネス面以外には見当たらない。

 現在の日本代表は、その9割近くがヨーロッパのクラブでプレーする選手で占められている。とりわけ今シーズンは、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグといったヨーロッパカップ戦に出場する選手も多く、所属クラブの首脳陣は、いかにして過密日程を乗り越えるかを考えながら、選手をやり繰りしながらスタメンを編成している。各選手のプレータイムを徹底的に管理するのが常識になっている。

 そんななか、短期間で長距離移動を強いられる日本代表選手が毎回アジア2次予選に招集されるとなれば、せっかくクラブが管理するプレータイムの意味も薄れてしまう。プレータイムが増えれば、すなわちケガのリスクは確実にアップする。ケガをすれば、その選手のキャリアにとってマイナスでしかなく、場合によっては台なしになるケースも考えられる。

 そもそもヨーロッパでプレーする選手たちにとっても、日本代表にとっても、アジア2次予選で得られるメリットは、「予選突破」という結果以外はほぼ存在しない。ヨーロッパ組の疲労蓄積やケガのリスクを考えれば、招集を強行することは百害あって一利なしと言っても過言ではない。

 そんなリスクを冒すなら、日本国内でプレーする選手たちの国際経験を積ませたほうが、よほど今後の日本代表のプラスになるはずだ。もし国内組だけでは不安ならば、ヨーロッパカップに出場していないヨーロッパ組に限定して招集し、そのうえでしっかりと各選手の代表でのプレータイムを管理して、疲労をできるだけ残さない状態でクラブに戻れるような起用方法を考えるべきだろう。

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