快勝のドイツ戦をカタールW杯と比較 「変わらなかったデータ」に日本代表の課題が見えた (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【ミスマッチ回避の策で3バックに】

 そのまま放置するのか、それとも修正を施すのか。当然、日本ベンチもその状況を把握していたと思われるが、実際に決断を下したのは、前半終了後にロッカールームに向かう前に冨安がベンチに立ち寄り、森保一監督に声をかけたのがきっかけだったのだろう。

 いずれにしても、日本は後半開始からミスマッチ回避の策として3バック(3-4-2-1)に戦術変更。その結果、後半はサネが大外でボールを受けてから仕掛ける回数を激減させることに成功させ、ほとんどドイツにチャンスを与えなかった。

 後半におけるドイツのシュートらしいシュートは、82分のコーナーキックでリュディガーが狙ったヘディングシュートと、95分にキミッヒのクロスにヘッドで合わせたギュンドアンのシュートのみ。逆に日本は、試合終了間際に久保のアシストから浅野拓磨と田中碧が加点し、森保監督の采配がズバリ的中した格好となった。

 後半開始から3バックに戦術変更して勝ったことはカタールW杯と共通する ものの、今回の対戦では異なる点がある。

 カタールでは1点リードされた状況で守備を修正し、その後に攻撃の駒を6枚に増やして攻撃的にシフトアップしたことが奏功して逆転勝利を収めたが、この試合では守備を修正した上で 最後にリードを広げることに成功。勝敗という視点に立てば、日本が主導権を握ったままの状態で勝利をつかんだと見ることもできる。

 スタッツについても、カタールW杯時と比べて変化が見られた。カタールW杯時のシュート数はドイツの25本(枠内9本)に対して日本は10本(枠内3本)だったが、今回はドイツの12本(枠内2本)に対し、日本は14本(枠内11本)と上回った。パス本数を比較しても、カタールではドイツが820本に対し、日本は261本。しかし今回は、ドイツの770本対日本の366本と、日本のほうに改善の跡が見られた。

 逆に、あまり変化が見られなかったのはボール支配率で、W杯時はドイツの65%に対して日本は22%(中立13%)だったが、今回もドイツの67%対日本の33%。これは、日本の戦術変更が大きく影響している。

 もちろん、ボール支配率が試合結果に直結しないのは言うまでもないが、後半開始から日本が守備時に5-4-1で守る陣形にシフトチェンジしたことで前からの守備が機能しなくなり、その結果、日本が自陣で守る時間が長くなったという現象が起こったことは見逃せない。

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