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日本代表の泣き所に光明 史上最高に充実の攻撃陣の起用法に杉山氏が求めること (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【三笘をフル出場させてはいけない】

 というわけで、日本の攻撃陣、少なくとも中盤から前は、穴が見当たらない状態にある。先述のとおり層も厚い。日本サッカー史上最高の充実ぶりと見る。問題は飛び抜けた選手がいないことだ。チャンピオンズリーグで優勝を狙うビッグクラブでプレーする10段階で8以上がつけられる選手である。

 となれば、日本の成績は監督の采配力に委ねられることになる。W杯で前回以上の成績を望むのなら、理屈的には監督こそ10段階で8以上の人物が必要になる。選手のレベルを確実に上回る監督だ。森保監督は監督として8以上のレベルにあるのか。

 エルサルバドル戦後に記した原稿でも触れたが、ホームで行なわれる親善試合で、日本が格上の相手と対戦する機会は、今後ほぼゼロだ。アジア枠が8.5にまで拡大したW杯予選も楽々突破できるはずだ。不成績を理由に、森保監督が解任される可能性は極めて低い。

 また、レベル8以上の、いわゆる世界的な監督を招くには莫大な費用が掛かる。円安、物価高も輪をかける。すっかり経済が弱った極東の国にあえて来てくれるお人好しの名将はいないだろう。森保監督はそうした意味でも変えにくい状況にある。続投するならば7の力を8に自ら上げる努力が必要になる。

 その意味で、三笘をフルタイム出場させてはダメだと思う。前田を起用する時間も短すぎた。瀬古歩夢も同様。最低20分はプレーさせないと招集した意味は薄れる。試合後、森保監督は会見で「日本にはこの他にもいい選手がいっぱいいる」と語った。「いい選手には経験してもらいたい」とも述べている。頭ではわかっているが実行できない状態にあるというわけだ。

 エルサルバドル戦(A)=守田英正、旗手、堂安律、三笘、上田、久保建英
 ペルー戦(B)=遠藤航、旗手、鎌田、三笘、古橋、伊東

 上記は、今回の2試合に先発した中盤、前線の選手だ。ダブっているのは2人(旗手、三笘)のみ。「2チーム分」と先述した理由だが、他にもいい選手がいっぱいいるなら、(A)、(B)どちらか1チーム分は休ませてもいい。若手中心の(C)を作り、今回は(A)と(C)、次回は(B)と(C)という組み合わせで代表を編成し、多くの選手を使いながら親善試合、アジア予選を戦う。そのぐらいの余裕が日本にはある。

 2026年本大会まで、ほぼ格下としか対戦できない課題をどう克服するか。可能性のあるすべての選手をテストすることこそが有効な強化方法。人気があるからといって特定の選手を引っ張りすぎるのは愚行である。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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