久保建英がソシエダで磨いた「味方を生かす技術」三笘薫との連携で何かが起こる「予感」は最大の収穫か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【欧州のトップレベルで戦う者同士の間合い】

 その後はスルーパスを何度か狙うが、これはタイミングが合わない。むしろミスだったが、ゴールに向かってトライするなかでアジャストさせる不敵さがあった。16分には、左から入ってきたクロスを自ら左足で合わせる。これは、わずかに左へ逸れた。21分には旗手怜央が打ったボレーシュートのこぼれに反応し、左足を振るがこれもバーの上へ外れた。
試合後に本人も認めているように、決めるべき場面だったが、覇気を漲らせてゴールに迫ることでタイミングは合ってきていた。

 そして25分、左からの攻撃に久保がするすると中央へ寄る。攻防のなかで一度は失ったボールを三笘が取り返すと、そのパスをエリア外で待って左足ダイレクトでゴールに流し込んでいる。いわゆる阿吽の呼吸で、ディフェンスが並び立つなか、針の穴を通す一撃だった。本人は「一番簡単」と振り返ったが、高難度のシュートだ。

「基本的に三笘選手は単独でできちゃうんです。でも、あそこまで高い位置だと、縦に行くよりは中に切り返すかなと思って。いい位置にいたらリターンあるかな、という軽い気持ちでした」

 久保はそううそぶいたが、その感覚こそサッカーの真理だろう。

「(久保)建英が見えて、左足で打てるような位置にパスすることだけ考えました。切替のところはチャンスになるので」

 呼応するように、三笘も淡々と語った。

 欧州でトップレベルの戦いに身を置いた者だけが知る間合いだろう。高い次元で、それぞれのよさを出し合う。勝つための術が、意識に刷り込まれているのだ。

 もっとも、コンビネーションの確立は一朝一夕ではいかない。

 31分には、三笘が得意とする左サイドからのカットインから守備を切り裂き、久保がパスを受ける。しかし、時間と選択肢がありすぎたか。迷った結果、本人も天を仰ぐ不本意なプレーになっている。

 森保ジャパンの「守りありき」の構造上、これまでふたりが並び立つ機会は決して多くなかった。あったとしても、それぞれが守備のタスクに追われていた。しかし、ゴール前の高い位置でふたりがイメージしたボール交換ができたら、十分に能動的に戦えるのだ。

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