「自分はまだ海外のレベルに達していない」松木玖生の意識は誰よりも高く、メンタルモンスター長友佑都から学びの日々 (2ページ目)
【松木への信頼は増すばかり】
ただ一方で、4試合11得点。「フォワードが点を取って勝つチーム」を監督が標榜するだけあって、前線の得点力は頼もしいものがあった。
「自分たちも絶対に点数を決められるチームではあるので、リードされてからも自信を持ってやっていました」と松木。
今後、世界が相手にどうかとなると、また別の話でもある。
松木は今大会では、キルギス戦の2得点など攻撃的なプレーだけでなく、キャプテンマークを巻いてチームを鼓舞し続けた。なによりも胸を打つのは献身性で、味方にパスを要求して前線で待つわけではなく、相手の攻撃の芽を積み、誰よりも走り回った。
「勝ってても、負けてても、最後まで笛がなるまであきらめないところは、自分が見せないといけないところかなと思います」
それが松木の"主将"としての覚悟だ。
所属クラブで出場機会獲得に苦しむ選手も少なくないなか、J1でレギュラーを掴んでいる唯一の選手でもあり、勘所のよさとゲーム体力、すべてにおいて現時点ではチームをリードする存在だったことは認めざるを得ない。さらに、松木自身も意識は高く、先を見据えている。
「自分の強みとして、運動量のところと攻撃力、守備力いろいろありますけど、海外に出て行ったら一番求められるのはそこ(運動量・攻撃力・守備力)だと思っている。プラスアルファとして求められるものもあるので、そこに自分はまだ達していないと思う」
欧州のレベルについては、高校時代からいくつかのチームの練習に参加し、経験して体感したことに加え、FC東京の同僚・長友佑都から学ぶものが大きいとも明かしている。
「長友佑都選手はすごくメンタル的なところ、私生活でもピッチでもいろいろなところで、自分しかり、若手選手たち皆にいい影響を与えています」
松木をイラク戦先発から外した影響について、冨樫監督は「想像の域を出ない」と話すにとどめ、多くは語らなかった。
それでも現時点では、明らかに「松木のチームである」と逆説的に感じさせるイラク戦であった。
著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。
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