カタールW杯現地観戦のカカロニすがやがサポーターの熱狂を語る。「あれだけスタジアムが一体となった日本コールは記憶にない」 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【俺たちには三笘がいる】

 スペイン戦を迎える頃には、サポーターのみんなは気持ちを切り替えられていました。スペイン対ドイツの試合が終わるまでは、ちょっと厳しい雰囲気でした。でもスペインに勝たなきゃいけないとはっきりとしたら、いい意味で開き直れていました。

 ハリーファ国際スタジアムに着くと、日本サポーターのモチベーションはすごく高かったです。ただ、スタジアム全体のスペイン人気はすさまじいものがあって、ドイツ以上でした。スペイン人は少ないのに、こんなにもスタンドが赤く染まるものなんだなと。スペインの先発メンバーも勝ちに来ている名前が並んだので、観客はよりそっちに傾いたと思います。

 試合が始まると、ドイツ戦ほど怖さはなかったし、「シュートを外してくれて助かった」という内容ではなかったです。それから今までのW杯にはなかった「俺たちには三笘がいる」という精神安定剤がありました。そこはドイツ戦で得たものがものすごく大きかった部分です。

 後半はじめから三笘薫選手と堂安律選手が投入されるわけですけど、個人的には「下げるのタケかよ」って思っていました。前半、ボールを持って一番やれていたのは久保建英選手だったので。ただ、それも3分で手のひら返しましたけど(笑)。

 後半に三笘選手が入って、「ここから勝負だぞ」とサポーターもそんな空気になります。ただ、逃げきりを図るスペインからボールを奪うのは至難の業だと思っていました。前から行けば日本の裏のスペースが空くわけで、アルバロ・モラタ選手はそこが大好物ですからね。正直、めちゃくちゃ怖かった。

 でもそんな僕の不安なんて吹き飛ぶくらい、日本の選手たちは勇気があって、鋭くて、堂安選手が打ったシュートのボールが信じられないくらい速かった! コースは正直甘かったと思うんですけど、それでもウナイ・シモンが反応しきれないほど鋭かった。

 あの目の覚めるような一発で、完全に日本のサポーターも「これはいける」「逆転できるぞ」という雰囲気になりました。そしてその直後に逆転して、スタジアムは完全に日本を応援するムードに傾きました。

 三笘選手が折り返したところでVARの判定があって、しばらく試合が止まっていましたけど、正直、僕らは何がどうなっていたのかよくわかっていませんでした。でもとりあえずみんな「ゴールだろう!」と叫んでいましたね(笑)。

 長いVAR判定が終わって、ゴールが認められた瞬間にもう一度スタジアムが歓喜で爆発して、そこからはサポーターもドイツ戦以上にイケイケムードです。この試合はスコアが動くたびにスクリーンにグループの暫定順位が映し出されていて、日本が1位と出た瞬間に中立層も含めて「日本いけるぞ!」とボルテージがどんどん上がっていきました。

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