鎌田大地「このやり方で戦っても先はない」。クロアチア戦のあとに見据えていたこと (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

【最高の鑑だったモドリッチ】

 今回の森保ジャパン26人の中でも、鎌田は異色の存在だ。

 ポーカーフェイスで我が道をいくタイプにもかかわらず、今や代表の旗手的存在になっている。そもそも森保ジャパンが緊急的に採用した5-4-1のシステムは、昨シーズンのフランクフルトがヨーロッパリーグでFCバルセロナを下したときの編成で、鎌田のよさを最大限に引き出すためのものでもあったという。それほどまでに、チーム内での立場は上がっていた。

 しかし、本人は少しも満足はしていない。

「今回、強豪国のスペイン、ドイツとはまだレベルの差があるなと。だからこそ、トップを目指したいです。今回のやり方(完全に引いて守ってのカウンター)で戦ったとしても、先はない」

 鎌田の言葉は強烈だ。しかし、それも腹を決めているからだろう。

「多かれ少なかれ、(今回のW杯で)悔しさを感じた選手と、活躍を嬉しく感じる選手の差はあると思います。でも、みんな同じで、そういうところを見せず、チームのために戦っている。W杯だからこそ、やっているんです」

 彼の視線はフラットだが、情熱も透けて見える。

「スペシャルなものはない」

 鎌田はそう言うが、だからこそ周りを生かし、自らも輝けるプレーのディテールにこだわってきた。クロアチア戦もそうだったが、特に遠藤航、堂安律と近いポジションを取ると、連係から面白いように敵を凌駕。遠藤、堂安のプレーを際立たせた。

 その行き着く先はトータルプレーヤーか。ピッチのどこにいても最善の判断ができ、周りの選手を動かせる。チームを輝かせ、勝利に導くという点で、クロアチアのエース、モドリッチは最高の鑑だった。

「(モドリッチは)37歳であれだけ動けるのは驚きで、自分がたどり着くべき最大値なのかなと思っています」

 鎌田も言うように、そこに到達点はあるのかもしれない。

 今大会の鎌田は、試合ごとに波があった。ドイツ戦は殊勲者だったが、コスタリカ戦は絶不調。スペイン戦は奮闘していたが、クロアチア戦は途中交代を余儀なくされている。おそらく、森保ジャパンでの適性ポジションはインサイドハーフだった。一番周りの選手と関係性を結ぶことができ、サッカーセンスが際立った。だがシャドー、トップ下だと、押し上げが少ない前線では孤立した。

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