日本代表の勝因をスペインの名指導者が分析。注目は「失点後のアクション」と3人の殊勲者 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

「持たれる」のではなく、「持たせる」に

 守田英正はこの日のベストプレーヤーと言えるだろう。抜群の戦術センスで、攻守のバランスを取っていた。スペースをマネジメントし続け、それゆえにパスカットにも成功している。

 また、伊東もボールへの反応が良かった。カウンター戦術を一番理解していたのも彼かもしれない。そして板倉滉もすばらしかった。モラタの得点シーンでは吉田麻也とのマークの受け渡しがうまくいかなかったが、前に出るディフェンスが非常によく効いていた」

 エチャリは3人の選手への評価を惜しまず、後半の怒涛の展開についても賞賛した。

「後半、日本の出足が良くなった。48分、GKウナイ・シモンまでプレスで追い込むと、左サイドでもキープを許さず、次々にプレスをかける。完全に嵌め込み、ウナイ・シモンがやや乱れたパスを左サイドのアレハンドロ・バルデに送った時、伊東が体ごとぶつけるようなチャージで奪い返すと、拾った堂安律が左足でゴールを撃ち抜いた。

 日本はシステムを見事に使いながら、交代選手を入れた立ち上がりのタイミングだけ強度を高め、スペインを一気にパニックへ追い込んだ。同点弾の3分後には、堂安が右サイドから入れたクロスを三笘薫がラインギリギリで折り返し、田中碧が飛び込んで押し込む。これで逆転に成功したのだ。

 スペイン国内でこのゴールは議論の的になっている。VARの判定に異議も出た。しかし、これは議論の余地がない正当なゴールである。ルールを知らない人間が流布させた判定への不服を、日本の方々は聞く必要などない。

 逆転した日本は、その後、再び守りを固める。タクティカルゲームに持ち込む。敵ボールホルダーがトライするようなボールを出せないようにしていた。その加減がとにかく抜群で、『持たれる』のではなく、『持たせる』に仕向けていたのである。

 スペインの選手たちは、ボールを持ちながらも、トライして失うのが怖く、手を出せない有様だった。

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