日本代表の勝利をたぐり寄せた選手交代のタイミング。早くても遅くても決勝点は生まれなかった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

追加点を奪われていたら番狂わせは起きなかった

 パスを回しまくるスペインは12分、左サイドから右サイドに展開。ガビがマイナスに折り返したボールを守田英正がクリアするが拾われ、ニコ・ウィリアムス経由でセサール・アスピリクエタがクロスボールを上げた。中央で待ち構えていたアルバロ・モラタには、GKの泣きどころである足元めがけてヘッドを叩きつける余裕があった。

 日本は、伊東純也を右のウイングバックに配す3-4-3(5-2-3)で臨んだ。守備的な作戦で臨んだにもかかわらず、早々に先制点を奪われたわけだ。失点とともに論理は破綻していた。森保監督には一刻も早く手を打ってもらいたいと、筆者は熱望した。

 日本が守りに回る時間は続く。攻めるスペイン、守る日本。勝負は決したとスタンドの観衆は判断したのか、前半20分頃には早くもスタンドにはウェーブが湧き起こった。退屈していることを選手に伝える観客の手段である。だが、スペインが先制点を挙げてから前半が終了するまでの間が、この試合のミソだったと思う。

 同点に追いつかれても勝ち抜けが濃厚なスペインは、スペインらしさは発揮したものの、必死になって攻め続けたわけではなかった。にもかかわらず、日本はまったく反撃できなかった。ウェーブが湧いた理由だ。ここでもしスペインに追加点を奪われていたら、番狂わせは起きなかったはずだ。

 後半開始早々、森保監督は三笘薫と堂安律を投入した。第1戦ではなく、負ければ終わりの第3戦だ。前半のうちになぜ、彼らを投入しなかったのかと筆者は森保監督の遅い交代を嘆いたものだ。ところが、これがちょうどいいタイミングになってしまうのだからサッカーは面白い。

 スペインは前半のペースに満足していた嫌いがある。後半もその流れで入った。その緩いムードのなかに、出場したくてうずうずしていた日本の2人のアタッカーが、カゴから解き放たれた鳥のようにピッチの上で躍動した。先発より交代選手のほうが期待できる日本代表を見た記憶はあまりない。

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