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浅野拓磨「僕はドラマチックなことが起きる人間」。香川真司にかけられた言葉、そのすべてが逆転ゴールにつながっている (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「赤い髪の人」も言っていた

 また、浅野は自身のシュートの決まらなさについて「メンタルの問題ではなく、あくまで技術の問題」と改善可能な問題と捉えてきた。この日のゴールは思いきりのよさだけでは片付けられないスーパーゴールだった。

 その観点からこのゴールを説明してほしい、と伝えてみた。浅野の回答はこうだ。

「そうですね、技術をも超えるタイミングが来ると言うことは、今日に限らず今までありましたし、その度に自分はヒーローになってきました」

 技術ではなく、タイミングだという。

「でもその瞬間はその一瞬で終わって、またズドンて落とされるタイミングが来て。どっちかと言ったら落とされている時間のほうが多いですし、もう落とされ続けて、落とされ続けて、批判され続けて。まあ、僕らはそういう仕事なのでそれ自体はなんもないですけど、ただまあこういうタイミングがくることは間違いない。

 それは技術どうこう関係ない、僕は試合前にも言いましたけど『気持ちの強いほうが勝つ』って。今までW杯を経験してきた赤い髪の人(横にいる長友佑都を指す)がそう言ってるのを聞いて『絶対そうだ』と僕も感じたので、だからこそ俺らやれるなと思いました。気持ちで勝てるって」

 最終的には気持ち、ということに落ち着いた。

 浅野はドイツとのW杯での対戦がすでに決まっていた4月、ドイツ国内で話題になったことがある。

 所属のボーフムで得点を決めた試合を、ドイツのハンジ・フリック監督が視察に訪れていた。フラッシュインタビューで「ハンジ・フリックが今日、見に来ているけど」とアナウンサーに聞かれ「ハンジ・フリック? なにそれ??」と答えたのである。

 敵将の名前を知らなかったのだ。日本でプレーするドイツ代表がいたとして「もりやすはじめ? なにそれ?」と言うのと同じだ。そのフリックの前で決勝点を決めて見せた。

「全然意識してなかったですけど、それ(フリックってなに?発言)も含めてすべてがつながっていると言うか。やっぱドラマチックってよく言うと思いますけど、ドラマチックってほんとにあることなんだなって。

 特に僕は、ドラマチックなことが起きる人間だと思ってるので、それが今日たまたまきた。まあもう今日のドラマはもう終わったので、次の試合に向けて準備したいと思います」

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