森保ジャパンの完成度を川島永嗣が明かす。「ポテンシャルは今までの3大会とはかなり違う」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 南アフリカW杯で川口は、ベテラン枠としてチームをまとめる役割も課されていた。だが、川口自身はあくまでもプレーヤーとして、ピッチに立つことを目標にトレーニングに取り組んでいた。その姿勢が当時の川島の胸を強く打った。それゆえ今回、川島はその時の川口のようにプレーヤーとしての矜持を忘れずに保持している。

「あの時、日本を背負ってきたナラさんや能活さんがプレーヤーとして臨む、そういう姿勢を見せてくれたことは大きいし、(後進に)ふたりの気持ちを伝えていかないといけないな、と当時は感じた。ただ、今も自分はふたりを追いかけている立場なので、ふたりがやってきたことを自分がやるというのは、僕としてはおこがましいと思っています」

 ベテラン顔をせず、謙虚にチームと向き合う川島。それでも3大会出場の経験は非常に大きい。しかも、3大会で2度もベスト16に進出した時のGKだ。大会前、グループリーグを突破した時のチームの完成度はどのくらいだったのか。チームがどんな状態であれば勝ち進むことができるのか。勝ち進むチームのムードとは、どんなものなのか。それをよく知る選手でもある。

 はたしてドイツ戦前、今回のチームの完成度はどのくらいなのだろうか。

「森保監督は途中にオリンピック(チームでの指揮)があったり、若い選手と経験ある選手と織り交ぜながら、いろんな考え方を持ってやってきた分、チームの完成度と言うか、ポテンシャルっていう意味では今までの3大会とはかなり違いますね。

 今まではどっちかっていうと、主力選手が同じで、彼らがどれだけ成長できるか、ということだったんですが、今回は若い選手が多い分、今までにない可能性っていうのを秘めているチームだと思う。自分たちが4年間重ねてきたものとプラス、個々のところで、過去のチームよりも、より可能性というのがあるのかなと思います」

 森保ジャパンは、東京五輪世代が中軸に顔をそろえる。若い選手は短期間、いや1試合でグーンと成長することがある。

 川島の見立てが正しければ、ドイツ戦でのパフォーマンスと結果次第では、若手の成長でチーム力が一気に急上昇。その後、日本がまだ見たことがない景色が見られるかもしれない。川島も、それを楽しみにしている。

【筆者プロフィール】佐藤 俊(さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など多数。

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